断頭台へ
昼食も夕食も外食で済ませ、家に帰った。
この自宅や事務所にあった生活必需品や、大事な書類などは、すでにゼノン達がハーベス共和国に運び出している。勿論、金品も。
ここに残っている大事な物は、オリハルコンの装備だけ。
真新しい下着とシャツに着替えてから、それらの装備を身につけた。
オリハルコンが織り込まれたアサシンのズボン。
オリハルコンのライトメイル。
オリハルコンが織り込まれた手袋。
オリハルコンの兜。
オリハルコンのバックラー。
これがオレの防具となる。
武器は、腰のホルスターに収めたオリハルコンのダガーと、ククリナイフ。
宝物庫から取り戻したこの装備さえあれば、カインと戦えるというのに。どうにも皮肉な結果となってしまった。
装備を整え、オレは嘆息する。
あとは、薬草に毒消し、それと携帯食、水筒を冒険者のリュックに放り込んでいく。
こうして旅支度を終えた。
ゲバラの情報が確かなら、明日にはこの街が軍隊で閉鎖されるはずだ。
そうなる前に、今夜中に街を出た方が得策だろう。
オットーの街で生まれ育ってきたオレには些かここに未練がある。後ろ髪を引かれる思いだ。
だが、決別の時がやって来たのだろう。
オレはハーベス共和国に亡命し、ハイランド王国との戦争に勝利する。
そしてきっと、ハイリッヒ王とカインの首を撥ねてやる!
お茶でも飲み、一服してから街を出ようとしたその時だった。
<アラート>の魔法を受信する魔石がほぼ同時に2つ鳴った。
きっと軍隊の小隊が、元の自宅と事務所にやって来たのだろう。
軍隊共の来襲は、予定を前倒しにしたのか、或いは夜襲をかけてきたのか分からない。
いずれにせよ、もうここから逃げるより他ない。
1000の兵士如きなら、囲まれずに少数単位で葬っていけば、どうとでもなる。
だが、ここでいらぬ戦闘をしてもしょうがない。自分の蛮勇さを誇示する必要性もないだろう。
オレは入念に装備品と冒険者のリュックを検め、部屋の蝋燭を吹き消し、窓を開けた。
そこから跳躍しながら、後ろに反転し、屋根の上に登る。
そして、そのまま夜の街中を駆けていく。
屋根の上から眼下を見ると、多くの松明の灯りがあった。
成程、これだけの数の軍隊が送られてきたのか。1000人の兵士がオットーの街に来るというのも、あながち嘘ではないようだ。
オレは兵士を見下ろしながら、死角になるよう屋根伝いを駆けていく。
そうして、街の正門や裏門の方ではなく、街の東に出た。
そこから大跳躍をし、街の塀を乗り越え、外へと脱出した。
「て、敵だーーー!」
オレを見かけた兵士が叫ぶ。
腰のホルスターからククリナイフを取り出し、そいつの喉元を描き切った。
その声を聞きつけたのか、近くにいた10名ほどの兵士がわらわらとやって来る。
そこで一閃。
ククリナイフを縦横無尽に振るい、あっという間に兵士達を始末した。
そこから全力で駆けていき、ライラックの林へと入った。
きっと、国境沿いの街道の詰所には、すでにオレの写真が手配されていることだろう。
ならば、このまま獣道を通り、国境を突破するまで。
あばよ、5人の勇者パーティーの連中。
そして、カインにハイリッヒ王。
お前等の首も5人の墓の隣に入れてやるよ。
その為にも、ハイランド王国との戦争は絶対に勝たなければいけない。
国家転覆をして、王政を打倒し、カインとハイリッヒ王を断頭台に乗せてやる!
第一章完結しました。
ここで一旦、連載を終了します。
ご愛読頂いた読者様に感謝します。
2章の構想はありますので、ストックが出来たらまた投稿していきます。
読者の皆様ありがとうございました。
応援や感想を一杯貰い、大変感激しております。
どうもありがとうございました。




