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毒殺のマリー

 カブドリには、アコニチン系アルカロイド毒が入っている。致死量は、アコニチン2~6mg。

 だが、この女騎士はやたらと頑丈なので、念を入れて10mgの顆粒を瓶の中に入れた。


 カブドリの毒は、摂取して10分から20分後に、効果が表れ始める。唇や舌の痺れに始まり,次第に手足も痺れていく。それから、嘔吐,腹痛,下痢。

 終いには、不整脈、血圧低下などを起こし,体が痙攣し,呼吸不全となって死亡する。


 そう、つまりマリーは剣を交えることもなく、惨めにオレから毒殺されるのだ。

 騎士にとって、これ以上の屈辱はあるまい。

 自分の嘔吐物に塗れながら汚らしい屍を晒すんだな。


 そこで、いや待てよと考え直す。

 ひょっとして、ロロナの奴、思いとどまって珈琲に毒を盛らなかった可能性もあるな。


 しかし、そうなったらそうなったで、マリーが寝付いた頃に襲撃をして、アサシンダガーで、彼女の心臓を一突きにするまで。


 多少、予定は狂ってしまうが、そうなった場合はやむを得ないな。

 いずれにせよ、今夜中にケリをつける。


 オレは身動ぎもせず、マリーの様子を固唾を飲んで見守っていた。

 珈琲を飲んで15分も経過しただろうか。

 マリーが声を出した。


「唇に舌が痺れてきた。い、一体、どうなっているの?」


 マリー椅子から立ち上がり、ベッドの上に身を投げた。


「きっと仕事の疲れだ。今日の生徒たちへのしごきは厳しくやったからな」


 マリーは手をかざす。


「手足もなんだか……痺れてきた。一体、どうなって……」


 そこでマリーは口を押えた。恐らく、トイレに行って吐こうと立ち上がろうとしたが、バランスを崩し、床に倒れ込んだ。

 そのまま吐瀉物をげぼげぼと吐き出していく。


 嘔吐してから、そのままゴロリと仰向けになり、はぁはぁと荒い息を吐き出している。

 額から冷や汗を吹き出し、いかにも苦しそうだ。


 さて、そろそろ頃合いだろう。


 オレは天井裏を思いきり叩いて、破壊する。穴が開いた所から、そのまま真下へと飛び降りた。


「ぐ、ぐりゅぐかぁ……ぎざま……ど、どくをもりやがったなぁぁぁ」


 恨めし気にこちらを見るマリーだったが、滑舌が悪くなっている。


「ああ、そうだが」

「ぐっ……わ、わだしは、どうなってちまうのだぁ?」

「呼吸中枢麻痺が麻痺し、呼吸不全で死ぬな」


「くっ、ころ」

「あ、なんだって? 聞こえねーな」

「ぐっ、ご、ごろせ。ぎしが、どくなどで、じ、じねるかよぉぉ」

「勿論、そうさせてもらう。ここまでやって、もし、お前が助かったりしたり事だからな。お前には、毒殺という屈辱を味合わせた。そろそろトドメを刺してやるぜ」


 オレはベルトに挟んでいたアサシンダガーを取り出した。

 それは部屋のランプから漏れ出る光に照らされ、鈍く光った。


 マリーは痙攣を起こし、身体をびくびくと震えている。

 そろそろ頃合いだな。

 吐瀉物に塗れながら、醜い屍となるがいい。


「ぐ、ぐりゅぐ。が、ガインにだけは……がれだけには、てをださないであげて……」


 オレは無言で首を振った。

 だが、近いうちにカインと会わせてやるよ。あの世でな。


 オレはアサシンダガーをマリーの心臓に突き立てた。

 そこから大量の血が噴き出した。

 マリーは目を見開いたまま、絶命する。


 終わったな。また一つターゲットを闇に葬り去った。


 そこで玄関口を激しく叩く音。

 カーテンで仕切られた窓に行くと、外から怒鳴り声が聞こえてきた。


「我々は衛兵です! マリーさん、ご無事ですか? 扉を開けてください!」


 どうやらロロナの奴が思い直して、衛兵の詰所に駆けこんだようだ。

 とすると、オットーの街のロロナの父母の家にいる奴等も危ないな。


 オレは三階の物置部屋へと駆けた。そこで冒険者のリュックから魔法の棒を取り出し、マルティスと会話をする。


「こちらに衛兵がやって来た。いずれ、そっちにも自警団が行くはずだ。すぐにその場を離脱してくれ」

「そうですか。分かりました」

「ドジるなよ。それじゃあな」


 それだけ喋り、冒険者のリュックに魔法の棒を突っ込み、物置部屋の向かえの部屋の行き、窓を開けた。


 隣は2階建てだ。ここから隣の屋根に飛び移れるな。


 オレは跳躍し、窓から隣の家の屋根へと飛んだ。そうして、家の屋根伝いに跳躍していき、街の外れまで辿り着いた。


 見下ろすと、王都サラトガを囲む堀があり、そこに水が張っていた。所謂、水堀だ。

 屋根から跳躍し、堀へと飛び込んだ。


 堀を泳ぎ切り、端まで着くと、そこにやもりの様にへばり付き、街道側の堀を上っていく。このくらいの障害物をよじ登るのは、盗賊にとって朝飯前だ。


 こうして王都から脱出し、オレは街道を<韋駄天>のスキルで駆けていく。


 これで勇者パーティーの半分を葬った。

 残る敵は、ハイリッヒ王を含め、あと4人。


 これから奴等をどう料理していくか、楽しみだ。

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