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ノイック村

 未舗装の道があり、木造りの民家がぽつりぽつりと点在していた。

 どうやらどこかの村に来たようだ。


「ここは王都サラトガの近くにあるノイック村。この村を流れている清流の水はとても美味しいの」


 マリーがそう説明してくれた。


「そうだな。ここで喉を潤し、戦闘で汚れてしまった装備なども軽く洗って、身綺麗にした方がいいな。そうしてから、堂々と王都サラトガへ行こうじゃないか」


 カインがそう提案すると、皆が頷いた。


 オレとカインは村の中央にある井戸に行った。

 カインは勇者の手袋を外し、井戸の上にある滑車の紐を引いて井戸に入っていた桶を引っ張り出した。


「おー。この村の水は確かに美味しいな! 格別の味がするよ。僕の次は、クリュッグが飲んでみなよ」


 カインの言葉に従い、オレも井戸水を飲んだ。

 清々しい水を口に含むと、体の中を清涼感が駆け巡った。


 それからオレ達は装備品などを村に流れる清流の小川で軽く洗った。

 小川の水を両手ですくい、顔も洗う。

 こうして身綺麗にしてから、ノイック村を去った。


 ここから王都までの道のりは、3kmほどだろうか。

 王都まで続く道を歩いて行くと、馬に乗った兵士がやってきた。


「失礼ながら、勇者カイン様とその御一行でしょうか?」

「そうだが、君は?」

「王より手紙を授かってまいりました使いの者です」

「そうですか。わざわざご苦労様です」


 カインは王城からの使いの者に労いの言葉をかける。


「ところで、カイン様。魔王がいた山麓から禍々しい気配が消え去り、モンスターの出没数も激減しました。ひょっとして、貴方様方がついに魔王を倒されたのですか?」

「そうです。艱難辛苦の末、どうにか魔王討伐に成功しました」

「やはりそうでしたか。それはなによりの吉報です! 王都で貴方方の凱旋パレードを用意していて正解でした」


 使いの者は喜び勇んだ。彼は馬から降り、カインに王からの手紙を手渡した。

 その手紙を読み終え、なにやらカインは使いの者とぼそぼそと話をしている。


「悪いが、クリュッグ。ノイック村に行ってきてくれないか?」

「どうしたんだ、カイン?」

「どうやら勇者の手袋を村に置き忘れてしまったらしい。僕は使いの人と話があるから、悪いけど<韋駄天>のスキルを使える君が取って来てくれないか?」

「分かった」


 オレは村に戻った。だが、どうにも手袋は見つからない。

 30分程だろうか、時間をかけて探したが見つからなかったので、パーティーがいる場所に戻ることにした。


 道を戻り、皆の元に行く。城からの使いの者はいなくなっていた。


「すまん、カイン。手袋を見付けられなかった」

「いや、それは僕の勘違いだった。水を飲むとき手袋を外したのだが、どうやらその時ポケットの中に入れていたみたいだ。無駄足を踏ませて済まなかったな」

「なんだそうだったのか。勇者カイン様も案外ドジなところがあるんだな」

「ちぇっ」


 カインが軽く舌打ちをすると、皆が笑った。

 そうして笑顔のまま城へ続く道を歩いて行く。皆で軽口を叩きながら歩いていけて、オレは幸せだった。やはり親友同士というのは、いいものだと実感した。


 道を行くと、王都が見えてきた。これから魔王を討伐した報告を王にすることになっている。

 魔王を倒し、憂いは去った。そして、王からも褒美を貰えることだろう。なんという栄誉なのだろうか。


 それに、真の仲間達もいてくれる。

 オレは幸せに包まれていた。


 そこで心の中にルナの不気味な声がした。


(フフフ、その貴方の笑顔もそこまでね)

(何だよ、ルナ)

(貴方はこれから手酷い仕打ちを受けることになるの。それに、裏切りが……裏切りが待っているのよ。それで貴方の心は、どす黒く染まっていくわ。私好みの邪悪な魂になっていくのよ)


 ルナの奴、なに馬鹿なことを言ってやがるんだ。

 オレは頭を振り、真の仲間達と共に歩んでいった。

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