SSクラスの騎士
チノを教会に送り出してから、自室に戻った。
そして、机の引き出しから7枚の写真を取り出し、床に置き、腰のホルスターからナイフを引き抜いた。
また標的の写真にナイフを突き立て、壁に刺し、それを横一列に並べていく。
そうしてからペンを取り、キュアの顔にバツ印を付けた。
これで写真にバツ印がついているのは、これでトレモロとキュアの二人になった。
誅すべき相手が順調に減っている。
オレはそれらの写真を眺め、一瞬笑みを漏らした後、真顔になった。
復讐相手に対する、執念の炎が再び胸の中で燃え上がってくる。
そうしていると、体の中からルナが這い出てきた。
まぁ、毎回なんだが、自分の体内から出てくるとか、痛みはないが気持ち悪いものがあるな。
「ククッ、いいぞいいぞ。元の仲間――キュアの命も刈り取るとは。お前は実に非情な奴だな。トレモロを害し、今度はキュアの命まで奪い去ってしまったのだからな」
「なんだ、悪いかよ、ルナ?」
「いや、それでいい。元の仲間達も容赦なく殺害する。それがいいんだ。お前の復讐が完遂されていくほど、その魂は汚れていく。そして、それはより美味に。甘露になっていくからな」
「オレの魂が汚れようが、構わない。たとえそれが黒く淀んだとしてもな」
「ククククク。いい心掛けだ。精々、復讐の牙を研いでおくことだな。相手への憎しみの感情もまた私の好物なのだから」
ルナは笑顔でいる。だが、その顔は悪魔そのものであった。
人を誘惑し、堕落させる悪魔。
そして、オレはすでに「憤怒」という大罪を犯している。つまり、悪魔に取り憑かれて当然な人間だということだ。
「なぁ、ルナ。話は変わるのだが」
「なんだ?」
「今後の復讐はより厳しくなっていく。キュアをやったことで、さらに相手が警戒をしてくるだろう。逆に相手が先手を打ち、奇襲してくる可能性も大きい」
「確かにそうだな」
「こちらが先手を取りたくても、防御力の高い敵が多い。やはり、王に取り上げられた伝説級の装備を取り戻さなければ、厳しい戦いになる。そこでだ。もしかしたら、今後はルナの力が必要になってくるかもしれない。その為にも、お前の力を把握しておきたいんだ」
「成程、了解した。そうだな……私の扱える究極魔法と言えば、大体の実力は分かるか。メテオやアルティマの魔法を唱えることが出来る」
ルナの言葉に顔が引きつった。彼女が強いのは、魔王の片腕を楽に切り落とした時から分かっていたが、想像以上だ。
極論を言えば、メテオの魔法で小隕石群を魔王に直撃させれば、それだけ事は決していた。
また、メテオの魔法なら王都サラトガなど、簡単に破壊し、壊滅状態に出来る。究極の爆裂魔法のアルティマも、また然りの威力。
「フフ、どうする? 私の力を欲するか?」
ルナの問い掛けに首を振った。
「いや。ルナはオレにとっての切り札、ジョーカーだ。ここぞという時にしか使いたくはない。それに、己の腕で復讐を遂行してからこそ意味があるしな」
「ククク、殊勝な心掛けだ。私が復讐相手に八つ裂きにしても、あまり意味がない。やはり復讐は、自らの手でやってからこそ意味がある。そうしないと、お前の心が穢れていかないからな」
オレは口角を上げた。つまり、今自分がしている復讐劇は、ルナにとっての養分になるということだ。
正に悪魔に魂を売った男に相応しい、皮肉な因果であると思い、思わず苦笑いしてしまった。
言いたいことを終えたのか、ルナはオレの体の中にずぶずぶと潜り込んでいった。
それからオレは、前まで住んでいた元の自宅に行くことにした。
冒険者ギルド等に住所変更届は出していないので、郵便物が来ていないか、たまに確認しに行かなくてはいけない。
まぁ、真裏に元の自宅があるので、それほど苦役ではないのだが。
そうして、路地裏をぶらぶらと歩き、元の自宅まで来た。
郵便ポストを開けると、手紙が一通入っていたので、その場で確認する。
文面を読んでいくと、SSクラスの騎士がオレの募集した張り紙に興味を示し、是非会って話を聞いてみたいとのことだった。
SSクラスの冒険者は非常に稀だ。この大陸全土でも、50人にも満たないだろう。
それも騎士なら、大いに助かる。
オレはその足で冒険者ギルドまで行くことにした。
冒険者ギルドまで着き、扉を開け、中に入った。そこからそのまま受付カウンターまで歩んでいく。
受付嬢に冒険者カードを提供し、喋り出した。
「オレに会いたいという騎士がいるそうだな?」
「ああ、クリュッグさん。丁度良かったです」
「何が丁度いいんだ?」
「その騎士さんなら、今、掲示板の前にいますよ。紹介しましょうか?」
「それはいいタイミングに来たな。是非お願いする」
「では、こちらにどうぞ」
受付嬢から件の騎士がいる所まで案内された。
そいつは銀の装備を纏っていた。一見したところ、中々に腕が立ちそうな雰囲気を醸し出している。
ブクマや評価などがあると、作者のテンションが上がります。
皆様からの応援があると、それを糧に「執筆頑張ろう」と、執筆も捗ります。
ブクマ、評価など、よろしくお願いいたします!
皆様の応援が何よりの励みとなります。




