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アルバム

 キュアは魔法の杖を(かざ)している。きっと次の極大魔法の呪文を練っているに違いない。

 魔法使いが呪文を練っている間、当然隙だらけになる。

 その間に投げナイフを放つが、全てが弾き返されてしまった。まだプロテクションの魔法は利いているようだ。


 キュアが魔法の杖を前方に突き出したので、オレは真横に再び大跳躍した。

 着地すると元いた地点で、炎の渦が巻きあがっていた。<インフェルノ>の呪文だ。


 クソ、キュアの奴、次々と極大魔法を放ってきやがって。

 大跳躍で、なんとか魔法を躱しているものの、いつまで躱しきれそうにない。

 このままではジリ貧だ。いつかは、極大魔法を喰らってしまいかねない。


 そうしたら、もうアウト。

 重症を負うか、あっけなく死んでしまうだろう。


 キュアの魔法の威力に改めて怯んだ。額から冷や汗が流れてくる。

 だが、決闘とはこうでなくてはいけない。


 ギリギリの命のやり取り。


 それにどうしても心が滾ってくるのは、事実。強大な敵を前にして、こうして楽しんでしまうのは、オレの悪癖。


 キュアはまた魔法の杖を前に出し、<ウインドカッター>魔法を乱射してくる。

 それを躱すと、後ろの草が削がれ、舞い上がった。


 ウインドカッターの呪文は、極大魔法ではないが、風属性の魔法で、かまいたちみたいなものだ。それに触れたら、ぱっくりと皮膚が切り刻まれてしまう。

 かまいたちで、瞼でも切られたら大事だ。瞼から血を流れ、視界が塞がってしまう。そしたら、もうゲームオーバー。


 極大魔法だけでなく、威力が弱く詠唱に時間がかからない魔法を織り交ぜてきやがったな。

 矢継ぎ早に魔法を繰り出されては、いつまでも躱しきれるものではない。

 それに、いつまでも跳躍して躱しているだけでは、芸がないし、埒も明かない。


 そこでオレは勝負に出た。


 連続跳躍をし、キュアの真横に陣取る。地雷魔法がない範囲のぎりぎりに。

 そこでオレは、魔法の胴当ての中に隠し持っていたキュアのアルバムを取り出した。

 チノとセリーヌの二人にアルバムを託していたというのは、大噓のブラフだ。


「あ、それは……」


 キュアの動きが止まった。そして、目を剥いて喚きだす。


「ああ、それは大事な大事なカイン様のベストショットがつまった私のアルバム! 返せ、返せよ!」


 キュアが般若のような形相をし、がなり立てた。


「返してやるよ、ほら」


 オレはキュアの近くにアルバムを投げた。

 アルバムは緩い放物線を描きながら、飛んでいく。


 キュアはそれをもぎ取ろうと、必死に前に飛んだ。どうやら反射的に体が動いてしまったのだろう。

 彼女はなんとかアルバムを掴み、地面に着地した。そして、自ら仕掛けた地雷魔法地帯に飛び込んでしまう。


 それと同時に大爆発が起こる。キュアが地雷魔法地点の上に着地し、地雷魔法が発動した。それに誘発され、近くの地雷が一斉に爆発する。

 それは致命的な一撃となった。キュアは自ら仕掛けたランドマインの餌食になった。


 オレはアルバムを投げたと同時に、連続跳躍をし、地雷原から大きく距離を取り、伏せた。それでも、爆風と爆炎がここまでやって来る。


 爆炎が収まってから、注意深く立ち上がった。

 爆風で巻き上がった土埃が辺りを覆っている。


 暫くして埃は舞い降り、視界が開けた。

 キュアの飛び込んだ先は、黒焦げに焼かれていて、最早、草の一本も生えていない。


「う、うぐぐぐ……かはっ!」


 キュアは口から血を吐き、地に体を伏しながら、顔だけをよろよろと上げた。

 自ら仕掛けた地雷の爆発に巻き込まれ、ボロボロになっている。

 彼女の魔法攻撃力は9999で、魔法防御力は9800だ。

 その差が致命傷となり、大ダメージを負った。


「あ、あああ。うぐぐぐ……」


 キュアは苦しそうに悶えている。だが、まだだ。まだ決着はついていない。

 <トラップ破り>を発動し、まだ<ランドマイン>の呪文が埋め込まれていないか確認する。

 青く光る所はない。どうやら、地雷原は誘爆し、跡形もなく消え去ったようだ。


 それを確認してから、倒れ伏しているキュアの元へと歩んでいった。彼女の脇に着き、オレはホルスターからククリナイフを取り出す。


 彼女の背中を蹴り飛ばし、仰向けの状態から前を向かせる。

 そして、無防備になった彼女の喉元をククリナイフで掻き切った。

 首の頸動脈が切れ、噴水のように鮮血が飛び散る。


 キュアはバタバタと手足を動かし、喉元を押え、もがいた。そして、そのうちにぐったりとして動かなくなった。

 彼女の口に耳を近づけてみるが、もう呼吸はしていない。


 決着はついた。


 オレは立ち上がり、辺りを見る。この辺はもう黒焦げだ。あの大爆発で、焦土と化している。


 地面を見ると、半分焼き焦げたカインの写真があった。きっと、アルバムが吹き飛び、一枚の写真が剥がれたのだろう。


 半分炭化した写真をぐしゃりと踏みつぶし、歩き出した。


 キュアを置き去りにしたまま、チノとセリーヌがいる所まで向かった。

 セリーヌからは何と言われるか……


 だが、ありのままの事実を告げよう。それで非難されようが、構わない。


 オレの行く道は修羅の道。復讐という名のいばらの道を歩んでいくのだから。

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