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極大魔法

 懐中時計が12時40分になった頃、歩いてくるチノとセリーヌを見付け、杉の大木の上から降り、木の裏を回って、キュアに見つからないように二人の後ろに行った。

 そして、二人の後ろに回り込み、トントンと肩を叩いた。


「クリュッグ。ここにいたのですね?」


 チノがオレを見遣る。


「全く、何の用だよ? こんな何もない草原に、何があるっていうんだい?」

「セリーヌ、聞いてくれ。ここから遠くに女性が立っているだろ?」

「ああ、まぁな」

「これからオレは彼女と果たし合いをする。お前とチノには、その見届け人になってもらいたい」


 セリーヌの目が鋭く光った。


「あの女は、アレか。お前を勇者パーティーから追い出した奴なのか?」

「ああ、そうだ」

「強いのか?」

「それはもう滅茶苦茶。彼女のレベルは290で、魔法攻撃力は9999で、魔法防御力は9800もある。彼女の極大魔法を喰えば、オレでも命はない」

「レベル290? SSクラスの魔法使いじゃねーか。Aクラスの魔法使いの私なんかじゃ、話にならないよ」

「いや、なる。だからここに呼んだんだ。なぁ、セリーヌ。オレに<マジック・プロテクション>の魔法をかけ、オレの魔法防御力を上げてくれ。装備自体は、対魔法の装備をして、魔法防御力を上げているが、それだけでは心持たない」

「あ、ああ。そのくらい、お安い御用だが」


 セリーヌは不安そうな顔をした。


「来たわね。けど、仲間たちといつまでごちゃごちゃと喋っている気なの? なんなら、このままアンタ達を極大魔法の<アイシクル>で貫いてあげてもいいのよ」


 キュアの声が聞こえる。彼我との距離は、100mといった所だろうか。何もない草原なので、相手の怒鳴り声がよく通る。


「約束は1時からだっただろ? まだ1時になってない。もうちょっとだけ待ってくれ。不意打ちなんかしてオレを殺したたら、お前が大事に大事にしていたあのアルバムの在処が一生分からなくなるぞ!」

「チッ! あと少しだけ待ってあげるわ。手早く済ませなさいよね」

「ああ、すぐに済む」

「ところで、その二人はなんなのよ?」

「彼女達は、あくまでもこの戦いの立会人だ。たとえ、オレがお前に敗れてしんでも、この二人には手を出さないでやってくれ」

 少し遅れて、「分かったわ」とキュアの声がした。


 オレはセリーヌに向き直った。


「じゃあ、マジックプロテクションの呪文、よろしく頼むわ」

「わ、分かった」


 セリーヌは呪文を唱え、オレにマジックプロテクションの呪文をかけてくれた。


「それじゃ、行ってくる。二人とも、もしオレが負けても、あの魔法使いには手を出さないでやってくれ」


 そう言うと、ドンとチノが体当たりするかのように抱きついてきた。


「ピンピンして帰ってくるのですよ。負けたりしたら、許さないのですから」

「ああ」


 オレは二人に手を挙げて、そのまま歩いて行った。

 そして、地雷原――ランドマインの魔法が埋め込まれた地点の前で、足を止めた。


「ど、どうしたの? 早くこっちに来なさいよ」


 キュアの上擦った声が聞こえる。


「いや、それは遠慮しておくぜ」

「ま、まぁいいわ。それで、私のアルバムはどこにあるの?」

「それはあの二人に託してある。オレが負けたら、素直にお前に返す段取りになっている」

「そうなの……なら、遠慮はいらないわね。さぁ、こっちに近づいて来なさいよ」

「それは遠慮しておこうか。わざわざ地雷原の中を進む馬鹿はいないだろ?」

「あ、アナタ、なんで私がこの辺一帯に<ランドマイン>の呪文を仕掛けているって分かったの?」

「それは企業秘密だ」

「なら、いいわ。とっとと死になさい。ラージファイアーボール!」


 キュアは、呪文を唱えた。大きな火の玉がこちらに飛んでくる。

 オレは瞬時の判断で、大跳躍で大きく後ろに飛んだ。


 ファイアーボールは<ランドマイン>が仕込まれた地雷原に炸裂し、物凄い爆炎と爆風がこちらまでやって来た。まったく、なんて威力だ。セリーヌからマジックプロテクションをかけてもらわなかったら、危ないところだったな。


 キュアは呪文を詠唱し、魔法を練っている。極大魔法を喰らわすつもりだ。

 コイツ、本当にオレを殺しに来ているな。


 極大魔法を喰らったら命はない。ここは、速攻でキュアの命を刈り取る。


 オレは再び跳躍して、前方に行く。地雷原の直前まで行き、ホルスターから投げナイフを取り出し、キュア目掛けて投げた。

 が、そのナイフは見えない壁のようなもので悉く弾かれてしまった。


 ちぃ、キュアの奴。自分の周りにプロテクションの魔法を張っているな。これでは投げナイフなど意味を持たない。

 接近戦に持ち込みたいところだが、彼女の周りに地雷原がある。迂闊には踏み込めない。

 だが、このままアウトレンジにいたら、魔法の餌食になってしまう。


「アイシクル!」


 魔法を練り終えたキュアが声にする。それと同時に、巨大で鋭い氷柱が空から降り注いできた。

 オレは大跳躍し、どうにか氷柱群を回避した。

 マズいな、あんなの喰らったらオレの魔法防御力じゃもたない。

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