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魔女へのお仕置き

 翌日の夕刻前、事務所に顔を出すと、すでにセリーヌがいた。


「あいよ、これが浮気をされた旦那二名からの報酬だ」

「は、早いな。もう仕事が終わったのか!? で、結果はどうだった?」

「どうもこうも。二件とも奥さんの浮気で確定。私は、依頼された旦那から浮気を疑われている奥さんのハンカチを貰って、<トレース>の呪文で、青い線を辿っていった」

「ふんふん、それで?」


 オレは興味津々といったかんじで訊いてみる。


「行きついた先は、宿屋『ライオンキング』だった」

「ああ、あの春を売る所もくっついている淫靡な宿屋か。あそこはナニをするのに、もってこいの場所だからな」

「そう。私はフロントでシングルの部屋を取り、二階に上がっていった。したら、トレースの線が続いている部屋から、間男と肩を組んで出てきたご婦人が丁度出てきてな。あたしが、その間男とご婦人に詰め寄って、事の真相を吐かせた次第ってわけ」

「成程。じゃあ、もう一件の方は?」


 そう言うと、セリーヌは盛大に溜息をついた。


「今度は依頼主から疑惑がかかった旦那さんの手袋を借り、その後を追っていった。そうして行きついた先が、またライオンキングで……」

「分かった。みなまで言うな」


 こめかみを押えながら、その先を聞くのを止めた。


「まぁ、そんな訳で無事事件は解決。それにしても、金持ちの旦那やマダムは金払いがいいねぇ。うひょひょひょ」


 セリーヌは札束を前にして、喜々としている。


「ああ、それな。約束通り半分やるから。取っていきな」

「マジ? 全部で400万はあるよ?」

「半分だけだぞ」

「喜んでー」


 セリーヌは自分が持参したバッグに札束を詰め込んだ。


「しかし、昨日から事務所を休みにしたのに、どうして来たんだよ?」

「そりゃ当然だろ。雇い主のアンタに報告しなきゃと思って、こうして昼過ぎから待っていた」

「それはご苦労様」

「なぁ、クリュッグ。金も入ったことだし、この後飲みにいかないか?」

「それは駄目だ。オレには重要な案件が入ったって昨日言っただろ?」

「そ、そうだったね。それじゃあ、クリュッグ。あたしは帰るね」

「ああ、お疲れさん」


 オレはひらひらと手を振った。


 セリーヌが帰ってから10分もした頃、事務所の外にあるポストを覗きに行った。そこに、簡素な封筒が入っていた。これは盗賊ギルドからのレポートに違いない。

 そのまま封筒を持って、自室に戻り、机の前の椅子を引いて座った。


 封筒をペーパーナイフで開き、中身をあらためて見る。


 キュアの自宅住所は、王都サラトガのアッセン町3-6か。

 追記に、サラトガの南東にある高級住宅街に位置しているとある。

 こいつは、忍び込むのが厄介そうだ。


 邸宅はやや広めの住宅みたいだな。あと、トレモロの屋敷と違って、使用人などは雇っていない。


 職業は、魔道研究所の所長をしている。土日祝が休みで、平日は9時から7時まで勤務している。今時分の季節なら、6時には日の入りになるから、暗がりで奴の家に忍び込めそうだな。


 よし、早速明日に動くか。キュアの自宅に侵入し、探りを入れることにしよう。

 その様に決め、レポートを机の上に置き、椅子から立った。

 その足で事務所を後にし、目抜き通りから裏路地に入り、自宅の近くまで来た。


 玄関の鍵を開けようと、鍵束をポケットから取り出し、玄関前に右足を置いた。


 ――と、同時に。

 爆発が起き、耳をつんざくような爆音と爆風と共にオレは後方に吹き飛ばされた。

 鉄製の玄関ドアも跡形もなく吹き飛んでいる。


 ちくしょう、キュアの奴やりやがったな。

 玄関前に<ランドマイン(地雷)>の魔法を張りやがったんだ。

 きっとこれは警告だ。キュアは盗賊ギルドの一員が探りを入れていることに勘づき、そのお返しに、<ランドマイン>の魔法を仕掛けていきやがったんだ。


「な、何事なのですか?」


 爆音に驚いたチノが飛び出してくる。

 ボロボロになったオレを見て、心配そうに駆け寄ってきた。


「大丈夫なのですか?」

「ああ、大したことはない」


 オレはチノの頭を撫でた。

 しかし、キュアの奴、なめやがって。わざと魔法力を弱めたランドマインを仕掛けていきやがったな。奴が本気を出して、ランドマインを設置すれば、オレは強烈な爆発に巻き込まれ、死んでいたはずだ。


「その余裕の態度。今の一撃でオレを殺さなかったのが、運の尽きだ。お前にはたっぷりと仕置きをしてやるからな」


 そう呟いた。


「誰にお仕置きをするのですか?」


 チノはきょとんとしながら、オレを見た。


「悪い魔女にお仕置きをするんだ」


 オレとチノは自宅の中に入っていった。


 ぐにゃりと湾曲した鉄扉が爆風吹き飛ばされ、奥の壁にめり込んでいた。

 チノは2階奥の自室のいたのだろう。彼女に被害が及ばなくてなによりだ。


 これでは、自宅に泊るのは無理だと判断し、チノを連れたって事務所に戻った。

 当分の間、事務所のソファーに寝る羽目になりそうだと、後ろ髪を描いた。

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