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下調べ

 魔法使いのキュアを次の標的に定めた。

 これはなにも出鱈目に決めたことではない。まず、カインと徒党を組んで襲ってきそうなのは、ヤツの恋人である騎士マリーと、ヤツに片思いをしている魔法使いのキュアだ。


 3人で来られたら、それこそ一巻の終わり。

 だからこそ、この3人の内の一人一人を抹殺していく必要がある。


 勿論、クソ勇者のカインは最後のメインディッシュに取っておく。奴は特に許せない相手だ。アイツには無様で惨めな死をくれてやるしかない。


 伝説級の装備を城で取り上げられてしまったので、硬い防具に身を包んでいる騎士のマリーや、カインには、オレの今の武器では太刀打ちできない。

 王都にある取り上げられたオレの装備品を盗み出すまで、この二人には手を出せない。


 そうなってくると、次の標的は自ずと防御力の低い魔法使いのキュアということになる。

 だが、それもあっさりと決着がつくものではないだろう。

 キュアの魔法攻撃力は、9999。対してオレの魔法防御力は8000しかない。

 つまり、彼女の極大魔法を一撃でも喰らえば、逆にオレが返り討ちにあい、屍を晒すことになるだろう。


 ターゲットを定めたが、ここは慎重に。

 まずはキュアの身辺調査を盗賊ギルドに依頼しなければならない。


 今日は水曜日なので、チノは教会に行っていて不在だ。そこで、受付嬢をセリーヌにやってもらっている。まぁ、来客もないので、セリーヌの奴はソファーにデレンと横になっているが。


「なぁ、セリーヌ。依頼は来てるかな?」

「ああ、それなら2件。どっちも浮気しているかの調査だわ」

「その仕事、お前に頼んでいいか? 依頼主に浮気を疑われている相手の品物を貰ってくれば、それを頼りにお前の<トレース>の魔法で、相手の居場所を辿ることが出来るだろ?」

「まぁ、そりゃあ出来ない事はない。出来ないことはないんだけどさー」


 セリーヌが目で訴えかけてくる。

 オレは軽い嘆息をし、口を開いた。


「わーたわーた。この依頼を解決させたら、依頼主からの報酬はお前と山分けだ。それでいいだろ?」

「オッケー。よっ大将、太っ腹」

「それとこれから1週間くらいは忙しくなる。今から事が片づくまで、事務所を休業することにした」

「どうしたん?」

「聞きたいか?」


 セリーヌは興味津々といった目をしながら、首を縦に振る。


「勇者パーティーにいた魔法使いのキュアを()ることにした。奴の身辺調査から始めて……大体、ケリがつくまで1週間といったところか」

「そう……それは復讐なんだよね?」

「悪いか?」

「ううん。だって、クリュッグは、沢山の屈辱を奴等にあわされたから。仕方ないことだと思うよ……」


 セリーヌは寂し気に俯いた。

 オレはこの前の洞窟での一件があったから、罵られるかと身構えていたが、そんなことはなかった。


「じゃあ、オレは盗賊ギルドに行ってくるから。セリーヌは事務所を閉めて、依頼主の所に行って、浮気を疑われている相手の品を取って来て、調査を開始してくれ」


 そう言い残し、客間から立ち去ろうとすると、背中に声をかけられた。


「ねぇ、クリュッグ。その件が終わったらさ、飲みに行こうよ」

「ああ、そうだな。お前と飲む酒は楽しいからな。チノも喜ぶし」

「きっと……きっとだよ」

「ああ」


 オレは手を振り、客間から出て、そのまま事務所を後にした。


 目抜き通りを歩き、目的地である盗賊ギルドにやって来た。

 扉を開けると、受付に頭領のゲバラがいたので、少しのけぞった。


「頭領であるお前が店番をしているなんて、殊勝な心掛けだな」

「おう、クリュッグの兄弟。久し振り。まぁ、なんだ。たまには店番という下働きでもして、下の者にも示していかなきなゃ。そうしないと、組織が締まってこねぇ」

「それはいい心掛けだ」

「だろ?」


 ゲバラは鷹揚な笑みを見せた。


「で、依頼なんだが」

「おう、任せろ。大抵のことは出来るぜ」

「魔法使いのキュアの住所や、邸宅を探ってもらいたい。あと、職業もだ。彼女が家にいない時間も分かるとありがたい」

「ああ、あの有名な魔法使いか。SSクラスの」

「そうだ」

「そんなことくらいなら造作もない。50万で引き受けるよ」

「助かる」

「明日の夕方には、キュアのレポートがお前の事務所まで届くだろうよ。それでいいか?」

「勿論だ」


 オレは首肯をしてから、もう一つの用件を切り出した。


「あと一つあってな。どこか、隠れ家的な住まいを探している。道の入り組んだ路地裏の家がベストだ」

「それなら、お前の自宅でピッタリだろうが」

「いや、それがオレの自宅は相手に知られている。だから引っ越しをしたい」

「まぁ、お前の頼みだからそれも受けてやるが、ここは不動産屋じゃねーからな。ったく。お前だから特別に、ウチのルートで、穴場の家を探してやるよ。ただし、キュアの素行調査と合わせて、100万頂くぜ」

「分かった。その線で頼むよ」


 オレは「それじゃあ」と言い、立ち上がった。ゲバラが手を差し出してきたので、彼の手を握って握手をし、盗賊ギルドを出た。

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