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トレースの呪文

感想欄で「アサシンなのに、復讐相手を殺さないのはおかしい」という意見を一杯頂きました。

私も「成程」と思い、復讐相手を殺害するか、暗殺するかのどちらかにしようと決断しました。

トレモロは殺して、その辺りは改稿しました。

また、ストック分も相手を殺害しています。


皆様の意見を反映させて頂きました。

ご意見ありがとうございます。

 アルフォートの屋敷から帰り、事務所に顔を出すと、相変わらずセリーヌはソファーに横たわっていた。どう見てもトドにしか見えない。

 彼女に来客はあったかと尋ねたら、「なかった」との答えが返ってきた。ならば、今日はこのまま店仕舞いだ。


 セリーヌから「飲みに行こうよー」とせがまれたが、すげなく断った。

 オレは彼女と別れ、家路につく。


「ククク。あれでいい。アンナという恋する者へも容赦なく復讐をする。それでこそ、お前の魂はますます穢れていくというものだ」


 街の通りを歩いていると、ルナが語り掛けてきた。その姿はインビジブルの魔法のせいか見えない。

 そして、断りもなく、彼女はずぶずぶとオレの身体の中に、また入り込んできた。


(いや、それは見当違いだ、ルナ。アンナなんか、もはや恋する者でもなんでもないのだからな)

(フフ、そうだな。それにしても、あのアンナとかいう小娘とは、関わりたくないものだな。さすがの私も、彼女と対決するのは避けたい)

(さっきもそんなことを言っていたな。悪魔だけに教会の関係者は苦手か?)

(僧侶だからといって、それだけで苦手という訳ではない。ただ、アンナは特別だ。彼女には<エクソシスト>のスキルも、<ホーリー>の呪文もある。先も言ったが、この私ですら、彼女が放つホーリーを喰らえば、消滅してしまうかもしれない。それほど彼女の聖なる力は、強大ということだ)

(やはりアンナの奴、大悪魔すらも退ける聖なる力を宿しているのか。それにしても、ルナ。自分の弱点をそんなにアッサリとバラしてもいいのかよ?)

(構わないだろう。最早、お前と私は同胞(はらから)なのだからな)

(へっ、そうかよ。そしたらまぁ、こっちとしても、お前の強大な力を利用してやるまでだぜ)

(ククク、お前は実に面白い。この大悪魔のルナ様を復讐のために、利用してやろうとしているのだからな。とんだ大悪党だ、お前は)


 へっ、悪党で結構だよ、オレは。上等だぜ。大悪魔すら利用して、復讐を完遂してやる。


 ルナと心の中で会話をしているうちに、家に着いた。

 鍵を開け、中に入るとチノが出迎えてくれる。


 それからキッチンに行き、チノと食卓を囲む。夕飯も彼女が作ってくれた。

 温かい飯を食べ、チノと他愛もないお喋りをする。こうしていることが、今のオレにとって、唯一心の休まる時間だった。


 夜の10時になるまで、チノとくだらない世間話をした。チノが眠そうにふぁーと口を開けたので、オレは彼女の手を引き、リビングを出て階段を上がり、部屋まで連れていった。


「おやすみなさーい」

「ああ、おやすみ」


 チノが扉を閉めると、オレも自室に戻った。

 依頼のこと、それにこれからの復讐――次のターゲットを誰にすべきかなど、思い耽る。

 そうしているうちに、時計の針は1時を回っていた。

 着替えをしてからベッドの中に潜り込み、少し考え事をしてから眠りに就いた。


 翌日、チノと一緒に事務所に行くと、明るい笑顔をぶら下げたセリーヌがいた。


「よし、来たな。それじゃあ、行方不明の少年を探しにレッツゴーだ」


 セリーヌがオレの手を引っ張る。


「ちょ、ちょっと待て。確かに少年を探してくれと彼の父親から依頼はきている。とはいえ、その少年は文字通り行方不明者だ。どこに行ったのか、見当もついていない。ただ、少年が履いていた靴下を父親から預かっているので、ギルドで鼻のいい犬を借り受け、匂いを頼りに追跡しようとは思っていたんだが」

「そんなことする必要ナッシング。そこはほれ、あたしが<トレース>の魔法のスクロールを買ってきたからさ」


 セリーヌが自慢気に言う。


 <トレース>の呪文か。人の通った跡を見付けたり、事件の痕跡を追ったりできる呪文だったな。それがあれば。


「なぁ、セリーヌ。ここに行方不明になった少年の靴下があるんだが、それにトレースの呪文をかけてくれるか?」

「勿論。任せておいて!」


 セリーヌはぶつぶつと呪文を唱え始めた。それから少しして「トレース」と声にする。


「ど、どうだ?」


 結果が気になるオレは、セリーヌに尋ねた。


「バッチリよ! この靴下から青い点線が見えるわ。それを辿っていけば」


 オレにはその点線とやらを見ることが出来ないが、点線を辿っていけば、少年の元に辿り着くことが出来そうだな。


 そう判断し、何か起きた時のために、万全の装備をすることにした。セリーヌにも声をかけ、彼女にも万全の装備をするように言った。


 10分もした頃、準備は整った。いざ、出陣だ。


「チノはどうしますか?」

「ああ、お前を忘れていたな。悪いが、チノには事務所に残ってもらって、留守番を頼めるかな?」

「了解したのです。二人共、いってらっしゃいなのです」


 チノが敬礼をする。まぁ、そんな大袈裟にしなくてもいいのだがな。

 ともあれ、チノに見送られて、事務所を後にした。

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