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第6話:アンオフィシャル

 古谷と新庄を迎えに来た車を運転していた者は、警察庁刑事局刑事総務課の職員のチャーリー・イノウエという日系アメリカ人だった。

「古谷係長、僕たち総務課で何するんですかね? これっていわゆる左遷(させん)ですか?」

「……俺に聞くなよ」

「あ、あのすいません。エ、エクスキューズミー?」

「私、日本語話せますよ」

 チャーリーはぶっきらぼうに話した。

「あの、刑事局刑事総務課ってどのような部署なんですか?」

「今はお話しできません。オフィスに到着した後課長からお聞きください」

 古谷と新庄は車に乗り込んで出発した直後に不可解なことに気づいていた。車は警察庁のある千代田区とは異なる方向に向けて走っていた。

「チャーリー、オフィスはどこにあるんだ? あと何分ぐらいで着くんだ?」

「オフィスは羽田空港の近くにあります。あと十五分ほどで着くと思います」

 約十五分後、チャーリーが運転する車はビルの地下駐車場に入った。

「このビルの五階に私たちのオフィスがあります」

 古谷、新庄、チャーリーは地下駐車場からエレベーターに乗って五階にあるオフィスに向かった。

「こちらです」

 古谷と新庄はチャーリーに促されてオフィスに入った。オフィスの入口のドアには「仲井戸会計事務所なかいどかいけいじむしょ」と書かれたオフィスプレートが(かか)げられていた。

 オフィスに入るとチャーリーは部屋の奥の席に座る人物に歩み寄った。古谷と新庄はチャーリーの(あと)について行った。

「古谷係長、新庄主任、お待ちしておりました。私は課長の仲井戸(なかいど)です。あちらでパソコンに向かっているのが下嶋武史(しもじまたけし)君です」

 仲井戸拓馬(なかいどたくま)課長は穏やかな口調で話した。仲井戸課長に紹介された下嶋はパソコンのモニタから視線を外さずに右手を上げて仲井戸課長の紹介に応えた。

「仲井戸課長、早速お聞きしますがこの部署はどんな部署なんですか? 警察庁の組織に刑事局刑事総務課という部署は存在しません」

「えっ? 古谷係長、それって本当ですか?」

 新庄は驚きの声を上げた。

 古谷の言っていることは本当だった。警察庁の組織には刑事局刑事総務課という部署は存在せず、総務課は警察庁の内部部局の一つである長官官房に属している。

「そのとおりです。刑事局刑事総務課という部署は公式には存在しません。お二人は田園調布署の松前署長から口頭で異動辞令をお聞きになったのではないですか? お二人の異動は形式的なもので、刑事局刑事総務課について知っている人間は、ここにいる五人と警察庁長官と松前署長だけです。お二人の所属は今も田園調布署のままです」

「仲井戸課長のご説明を聞いてますます私たちが異動になった理由がわからなくなりました。非公式なこの部署で私たちは何をするんですか?」

「こちらでは捜査本部とは別にキラーゼロの捜査を行います」

「キラーゼロと思しき犯人は先日渋谷で自殺したじゃないですか。首謀者を逮捕するための捜査なら捜査本部が行っていますが?」

 新庄は仲井戸課長に意見を述べた。

「渋谷のホシはダミーや」

 下嶋はパソコンに向かったまま口を(はさ)んだ。

「本物のキラーゼロはまだどこかに潜伏しています。首謀者の命令があれば新たな犯行に及ぶでしょう」

 下嶋に続いてチャーリーが口を開いた。

「私たちの任務はキラーゼロの射殺と、首謀者の逮捕です」

「仲井戸課長、キラーゼロは逮捕ではなく()()なのですか?」

「はい。キラーゼロは逮捕しても何も自供することはないでしょう。キラーゼロによる被害者をこれ以上増やさないためには射殺が最善の策と考えています」

「日本の警察が犯人を現場の判断で射殺しても良いのですか?」

 新庄が仲井戸に対して質問した。

「日本の警察では難しいですが、この部署は非公式ですがFBIの外部組織と位置づけられています。私たちの誰かがキラーゼロを射殺したとしても、FBIの捜査官であるチャーリー君が射殺したことになるように処理します」

「FBIではかねてから日本でのキラーゼロによる犯罪が起きることを予想していました。この部署はキラーゼロの捜査に特化した部署なのです」

 チャーリーが古谷と新庄に対して説明した。

「さしずめここは『キラーゼロ対策室』ってところやな」

「キラーゼロは私たちの手で必ず(ほうむ)ります。これ以上被害者を増やさないために必ず……」

 仲井戸の言葉には並々ならぬ思いが感じられた。

 こうして古谷と新庄は、キラーゼロの捜査に特化したアンオフィシャルな組織「キラーゼロ対策室」のメンバーとして活動を行うこととなった。

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