第32話:形勢逆転
麗香は髪の毛を掴んでいるキラーゼロの左腕をナイフで切りつけ、隙きをついて距離を取った。
キラーゼロはすぐさま麗香のもとに駆け寄った。麗香はキラーゼロに背を向けている。麗香の背中を切るにも刺すにも絶好のチャンスだった。
キラーゼロは麗香の背中に向かってナイフを刺そうとした。しかし、その瞬間視界から麗香の姿が消えた。その直後キラーゼロの背中に複数の痛みが走った。
「なんだあの動きは? 俺はあんな戦い方教えてないぞ」
キラーゼロに対する怒りと憎しみの感情が頂点に達したことで麗香の潜在能力が引き出された。
麗香はキラーゼロに刺される直前、バク転でキラーゼロを飛び越え背後に回ってキラーゼロの背中を複数回ナイフで突き刺した。
着地するやいなや、鞍馬の旋回技を応用してキラーゼロの足を払い転倒させた。通常の足払いと違って全身を使った旋回技による足払いは数倍の威力があった。麗香の攻撃は立体的な攻撃に変わっていた。
麗香は素早くキラーゼロに馬乗りになった。
「これで終わりね」
麗香はキラーゼロの左胸に向かってナイフを振りかぶった。
「麗香、避けろぉ!」
丈太郎の言葉とキラーゼロの動作を瞬時に判断して麗香は顔を右にそらした。キラーゼロは銃を一丁背中に隠し持っていた。キラーゼロが撃った弾丸は麗香の右頬をかすめた。
その直後、キラーゼロは麗香の一瞬の隙きを突き体勢を入れ替えて麗香に馬乗りになった。
「形勢逆転だ。こうなったらお前に万に一つも勝ち目はねぇよ」
「くっ!」
キラーゼロはすかさず麗香が右手に持っていたナイフを奪い取って投げ捨てた。
「ほっぺたから血が出てるじゃないか。舐めてやるよ」
「やめろ! 汚らわしい!」
そう言うと麗香はキラーゼロに対してつばを吐きかけた。
キラーゼロは顔に吐きかけられた麗香のつばを左手のひらで拭うとそのつばをベロリと舐めた。
「麗香ぁ、お前見れば見るほど可愛い顔してるなぁ。殺すには惜しいよ。女の悦びもまだ知らないんだろ? 俺が初めての男になってやるよ。光栄に思えよ。最初で最後の女の悦びだ。たっぷり味わいな」
「やめろっ! 汚い手で触るな! やめろっ!」
そう言うとキラーゼロは麗香のタクティカルベストのフロントファスナーをゆっくり下ろした後、上着を力任せに引き裂いた。
「あ……、やめろっ! やめろぉ!」
「すぐに気持ちよくさせてやるよ……」
キラーゼロは麗香の顔を舐め回し、黒のタンクトップ越しに麗香の右の乳房を乱暴に揉んだ。
「やめろぉ! これ以上麗香様に手を出すなぁ!」
「うるせぇんだよジジイ。黙って見てろ」
征二のほうを見ることもなくキラーゼロは征二のいる方向に威嚇発砲した。
両腕、両足を負傷して身動きが取れず倒れている征二と丈太郎は痛みをこらえて麗香とキラーゼロのもとに少しずつにじり寄っていくのが精一杯だった。
キラーゼロはなおも麗香の上半身を舐め回し片方の乳房を揉んだ。
麗香の右腕はキラーゼロの太ももの内側にありロックされていたが左腕は太ももの外側にあり自由に動かせた。麗香は左拳でキラーゼロの体を叩いた。
キラーゼロが再び麗香の顔を舐めようとした時、麗香は左パンチを繰り出した。しかし、麗香のパンチはキラーゼロの首筋をかすめただけだった。
「そんなパンチで俺を倒せ――」
キラーゼロが言いかけたその時、キラーゼロの左の首筋から勢いよく血が吹き出した。
「あまり女を見くびらないで」
キラーゼロは左手で首筋を押さえながら立ち上がると麗香との距離を取った。
「お、お前、左手に何を隠し持ってやがる?」
麗香が左手に隠し持っていた物は、貴理子からプレゼントされた魔法のナイフ、強化フロートガラス製の透明なナイフだった。
麗香は確実にキラーゼロの頸動脈を切った。




