プロローグ2ー1
サブタイ1ー○→主に主人公視点
サブタイ2ー○→主に主人公以外からの視点
朝
目を覚まして起きた陸は、朝食を求めて、食堂に向かった。
「あ!陸、こっちこっち」
先に来ていた彼女、玲に呼ばれて、近くの空いている席に座った。
「おはよう、陸」
「陸くん、おはようございます。」
「おう。2人ともおはよう」
そう挨拶して、主に、昨日のことで雑談していると、
「皆の衆、おはようでござる」
裕太がそう挨拶して、陸達の会話に加わった。
…しばらくしてから、いまだ食堂に来ていない太一のことが話題になった。
「たっくん、遅いなぁ〜」
「陸、何か知らない?」
「いや、俺は何も知らないぞ、あいつの部屋に寄らずに来たからな」
「拙者も知らないでござる」
「どうしたんだろ〜」
桜が太一のことを心配して、そう言ったとき、
「皆の衆、あそこを見るでござる」
裕太が指さした先には、王女がいた。
この時点で、実は、太一以外、全員が食堂にいたのだ。
そして、王女が口を開いた。
「朝早くから私がこの場所に来たのは、皆さんに悲しい報告があったからです。実は、皆さんのお仲間の1人が、城の中からいなくなってしまったことが、騎士達の調査で判明しました。」
いなくなった?…1人…!
陸は、すぐに立ち上がって、確かめるように、太一の部屋に向かっていった。
「太一!!」
勢いそのままにトビラを開けて、中に入ったが、誰もいなかった。
「嘘だろ」
信じたくない、そう思って下を向くと…
ん?
床に何かが転がっているいて、それを拾った。
「これって…まさか!」
陸は、一度、自分の部屋に戻ってから、食堂に向かった。
ざわざわ…ざわざわ…
食堂は、陸の予想以上に騒がしかった。
「陸!」
玲が陸に気付いた。
「陸くん、1人ってことはやっぱり…」
「ああ、太一は…部屋にいなかった」
その発言に、桜がふらついて倒れそうになった。
「桜!」
とっさに玲が桜を支えた。
「玲、とりあえず桜を部屋に、裕太は、俺と一緒に部屋まで来てくれ」
陸がそう言うと、桜を支えながら玲が食堂を出て、陸は裕太を連れて、再び自分の部屋に戻っていった。
陸の部屋に入った2人は、それぞれ、ベッドと椅子に座った。
「裕太、俺が食堂を出ていった後のことを話してくれ」
「わかった…でござる。実は…」
あの後、王女の口から、太一がいなくなったことがわかった理由が説明されたらしい。
何でも、夜中に勝手に城の中を歩いているところを、巡回中の騎士に見つかって、逃げ出したらしい。
そして、逃げている最中に、立ち入り禁止している場所に侵入して、そのまま部屋の1つに入ったらしい。
それで、実は、その部屋は王都の近くにあるダンジョンの最下層に一方的につながっていた転移部屋だったらしい。
そして、転移が正常に発動したことが、その後、確認された。
ダンジョンのほうも、攻略することは、魔王を倒すことと同じくらいの難易度で、助けに行くことは、できないと王女は言った。
「そうか…わかった、教えてくれてありがとう」
「これぐらい、どうってことないでござる」
「そうか、じぁあ、次は俺の番だな…こいつを見てくれ」
陸は、先ほど、太一の部屋で拾ったものを見せた。
「え?!…え〜〜!!どうして、これが…ペットボトルがあるんですか」
「…お〜い、裕太、口調、口調、戻っているぞ」
「は!すまないでござる。つい、興奮してしまったでござる」
「まぁ、仕方ない。太一の部屋でこいつを見つけたときは、俺もすごく驚いたからな」
「そうでござるか、して、中身のほうは」
「まだ、少し残っているぞ。ほら」
陸から渡された裕太は、恐る恐る飲んでみた。
ピカッ
裕太の目は、大きく開いた。
「この味、間違いなく、本物でござるな」
「そうだよなぁ、そう考えると…ちっ、やっぱり太一のやつ、こっちでも主人公ルートを進んでいるで確定だな」
「そうでござるな。拙者も…こっちでも?こっちでもって、どういうことでござるか?」
「あれ?裕太は知らなかったのか、学校では、結構有名だったぞ。あいつがラブコメの鈍感系主人公だってこと」
「なにそれ、知らなかったでござる!詳細を!」
「はいはい、落ち着け。とりあえず、今回の転移組というか、うちのクラスに、学内トップクラスの美少女が揃っているのは、知っているだろ?」
「さすがに、それくらいは知っているでござる。正しくは、トップ5が揃っているのでござる。拙者、このクラスになれて、最初は、嬉しかったでござるから」
「トップ5…1位は桜で、2位が玲、3位は真面目系委員長の長瀬恵、4位はあの勇者と親戚関係らしいリアルお嬢様の天峰静香、最後に5位のチ…小柄のカワイイ系?飼育委員、藤林鈴音だな」
「そうでござる。それに拙者達の担任教師である高遠朱里先生もトップ5と同じくらい人気の高い先生でござるな」
「…そんな、テンションが高い裕太に、言いたくはないが、今からトドメをさす…太一のやつは、玲以外の (先生含め)5人と既に恋愛フラグを立てている。そして、これは、玲から教えてもらった情報だけど、その5人全員が現時点で、太一に対して好意をはっきりと抱いているらしい」
「……は?」
「ちなみに、太一本人は、さすがに、幼なじみである桜の好意には、気付いているかも知れないが、他の4人からの好意には、全く気付いていない。これは断言できる」
「……ははは、まさしく、ラブコメの鈍感系主人公でござるな」
「そして、この異世界でも、いつの間にか、主人公ルートを進んでいるしな」
「低過ぎるステータスに、不遇な環境、複数のヒロインの存在と、謎のペットボトル、最後は、なぜかダンジョンの最下層に転移した。……そして、最強になって、戻ってくる…でござるか」
「たぶんな、だから、太一のことは、心配しなくても大丈夫だろう。それよりも、俺達のほうがヤバくなりそうだ」
「拙者達のほうが?」
「そうだ。食堂での、あの王女の様子から、この国のトップは、間違いなく勇者以外を捨て石のように考えているはずだ」
「拙者もその考えに同意でござるよ。それに、改めて、思い出してみると、あの王女は、まるで報告書を読んでいるかのように、拙者達に言っていたでござる」
「この国は、クロで確定だな。しかし、今の俺達はまだレベルが低いし、出来ることが少ない。今後は慎重に行動する必要がある」
「拙者も賛成でござる」
「それじゃあ、俺はこのことを玲達に伝えてくる」
「拙者は、今の状況でもできることがないか、考えるでござる」
そうして2人は、部屋から出ていった。
本編 (本文)で、書かれなかった裏話
プロローグ1ー3の最後で桜が太一に使ったスキルの説明をします。
内容は、
聖女の願い
死亡状態になってから、数分後に1回だけ蘇生が行われる。
ただし、一度使うと、1ヶ月間は最使用ができない。
つまり、現在 (プロローグ2ー1)太一は、ダンジョン最下層で呑気に寝ています。
次回からは、ダンジョン編が始まります。お楽しみに。