別章〉狩穏(太郎)の居ない地球
主人公の知らないところで話が進んでたりする
地球某所。
山田太郎こと『綾小路狩穏』が死んで10年がたったある日。
「あなた、狩穏の子供は見つかりましたか?」
「いや……その方面は全然駄目じゃ。じゃが本人と連絡を取る手段は見つかったぞ」
「あら、無能なあなたにしてはナイスな成果じゃない。どんな非人道的手段を使ったのかしら?」
「そういうおまえも無理矢理生き還らそうとして世界中からシャーマンやら生け贄やら集めた挙げ句、フランケンシュタインの怪物を造りかけていたではないか。この魔女め」
「そのような過去の過ち、犬の餌にしてしまいましたわ。
して成果の程を伺っても?」
「ああ、最初は駄目元で日本中の霊能力者に降霊させていたんじゃが、その時にな……」
「あら、あなたも似たような事してたのね」
「儂はその場で蘇生できなかった時点で生き還らそうとは思わんかったがな……
その降霊で“死んだ”狩穏を知っている者を呼んだ者がおったんじゃ」
「死ぬ前の狩穏を知っている者ではなく、死んでしまった“後”の。ということかしら?」
「そうじゃ。本人と直接話はできなかったが、近況と連絡を取る方法を教わった」
「色々とお聞きしたいのだけれど……まず近況をお聞きしても?」
「ああ。まず、狩穏は既に輪廻して違う生を受けておる……異界でな」
「あら、地獄で鬼を相手に金儲けでもしているのかと思ったら……異界で金儲けですの?」
「いや……世界を救っておるらしい……それも神の使者としてな」
「まあ、それは似合わない」
「うむ、儂もそう思うんじゃが……とりあえず最初の目的であった子供の有無の確認は出来ておる」
「役立たずかと思ったら少しは使えるのね、あなた」
「いや、そう言う意味では役立たずじゃ……儂は。結局、狩穏に子供はおらん。
まあ、それは予想通りじゃがな……」
「では綾小路家の後継は完全に絶たれたのね……この役立たず、隠し子ぐらい作っておきなさい」
「無理を言うでない!儂にはおまえしかおらん!
それ以外に興味も無いんじゃから無理に決まっておるじゃろうが……」
「女としては嬉しく思うのですが……種ぐらいはとってあるので?」
「……無い。そちらこそとってあるのか?」
「それこそ無理を言わないでくださいな。何十年前に止まったと思っているの?
わたくしは狩穏にだけ全力を注ぎましたのよ?」
「すまん……やはり奥の手を使うしかなさそうじゃ……」
「奥の手?……“今”の狩穏の子種もしくは子供そのものを手に入れられると?」
「ああ……それ相応の代償もあるがな」
「如何程?」
「儂らの残りの寿命と現時点での全財産じゃ」
「まあ!なんてお安い!」
「じゃろ?!
死に損ない2人の命と小銭で儂らの“孫”が出来るのじゃ!
狩穏が生きておったら残りの寿命と死ぬ迄に稼ぐであろう財産全部使っても可能かどうかだったのがじゃ……それが“現時点”で可能なのじゃ!」
「……長生きはするものね」
「……そうじゃなぁ」
「「……」」
((久々にゾクゾクする言葉の応酬だったわ(じゃたな)……今夜も燃える(わ)……))
2人は互いにSであり、Mです(そして70越えてます)。
山田の特殊な趣味は遺伝(?)だったんですね。
その後、しばらくして地上10指に入る大財閥『綾小路家』が後継ぎ不在により“地球”から消えました。
当主が高齢ということもあり、普通に老衰扱いされたそうです。
~…~…
東京丸ノ内オフィスビルの一角にて。
「久しぶりね。
それにしてもいきなりよね~あんた来る時って。
初めてあたしの前に現れた時もそうだけど……」
『最初に加奈に呼ばれた時はこっちもビックリだったニャ。
まぁ、今回はこっちの都合で来たがニャ』
「……しっかし本当に良かったの?勝手に転生なんてさせて……」
『ニャ?それは大丈夫ニャ。
〈悪魔〉としては契約だから全く問題無いニャ。
〈神〉としても別に過剰に寿命を搾取した訳じゃニャいし問題無いニャろ。
むしろ天寿を全うした2人を息子の所に送っただけだからニャ』
「そ。でもあん時はビックリしたなぁ~いきなり爺さんが訪ねて来たと思ったら『息子を呼んでくれ!』ってアタッシュケース目の前に叩きつけんだもん……」
『まぁ、あの時点で“世界屈指の陰陽師榊 加奈”は有名だったからニャ』
「でも霊視で1億はさすがにビビったよ~
どんな悪徳霊能者でも1億は取んないでしょ、普通」
『加奈……悪徳霊能者は最初から除霊を視野に入れて話を進めているからそれくらいは取るニャ……』
「マジでか……」
陰陽師であり巫女である榊加奈。
式神とその依り代に某リラックスベアを使う異端の霊能者。
その除霊光景はリアルリラックスベアが霊をパクパクする……ウァサゴもドン引きなシュールなものである。
そんな加奈に一時、式神として呼ばれた事があるウァサゴ。今回カリオンの父親が加奈に霊視依頼をした事を嗅ぎ付け、子供だけじゃかわいそう(面白そう)だからってことで両親も送ってしまおう!と、手引きした。
カリオンに連絡を取る事も、死んだ後に転生させる事も別に無償で構わなかったのだが……地球はウァサゴの管轄外なので加奈の式神と悪魔という立場を利用してコトを進める。
しかし、そこは管轄外。
無駄に大量にある魔力が全く利用できない場所なので、対価(地球の神への手数料)を取る事となった。
普通の人間の感覚でいえば大富豪の全財産や寿命(20年分)は相当な負担なのたが、神や大富豪からすると安いらしい……
(カリオンの両親の感覚はぶっ飛んでいるだけかもしれないけど……)
この章で登場した『巫女加奈』は『猫』の別話で書いてたりします。
気が向いたら『猫』の方で本編にぶち込むかもです。
次から本編に戻ります。