(1)冒険者ギルド
獣人達の街の冒険者ギルド前。
とりあえず身分証を作る為
(決してS級冒険者や帝に為るためじゃない!)、
登録をしたいと思いやってきました~
山田太郎です。
ギルドは登録だけで、しばらくは依頼(討伐系)を受けるつもりはありません。
だってそうでしょ?
数少ない魔物を態々狩り倒す必要性なんて、これっぽっちもないんですから。
いや本当に。
強いて討伐するなら……盗賊?
いや……場合によっちゃ盗賊は保護するかも……
だって、人の迷惑=世界環境改善の可能性あり!
だからね。
はぁ……
別に世の為人の為に何かしたいってわけじゃないけど……態々、人間狩りする必要もないっしょ。
しかし物理的問題はともかく、思想的問題が一番の難点なんですよ~
生粋の人属至上主義者の方々が主義の変更を受け入れてくれるかって言ったら……
無理でしょうな、まず。
最悪、洗脳(再教育)……でしょうね……
「山田様、登録の準備ができたみたいです」
「分かりました……って、本当に蹴散らしたんですね……」
みんな、いい表情(恍惚?)でぐったりしてます。
倒れて気絶した瞬間、傷だけ直してあるからギルドの受付やその他のスタッフは黙認。
倒れた冒険者(全員男性)もさることながら、周りの女性冒険者(受付嬢も)一部いい表情(恍惚?ウソ……)でライブラさんを見ています……
ライブラさん、モテモテです。
少し嫉妬してしまいます。
「……寒気がするので変な想像しないでください
(さもないと蹴りますよ?本当に)」
「……蹴ってから言う(思う?)のは勘弁してください」
さすがに僕も飛ばされたら話が進まないので軽く払いのけます。
そして、これ以上受付のお姉さんを待たせるのも……
受付のお姉さんを待たせるのも……
受付のお姉さん……
……
お姉さん?
………
いや……お兄さん?
…………
いや、化けも「何か失礼な事考えてないかしら?」……
……失礼しました。
お姉さん(漢)です。
れっきとしたオネェさん(漢)です。
地球でもあまりお見かけしなかった(引きこもってたからね……)“本物”のオネェさん(漢)です。
正直逃げたいです。
でも……逃げたら逆にヤバそうなのでこのまま話を進めます。
「……本当に失礼な坊やね~後で可愛がっちゃうわよ?」
スタッ!
土下座です。
見事な位のジャンピング土下座。
我ながら惚れ惚れする程の土下座っす。
「これ(山田様)は放っておいていいです。
ギルド員の登録手続きをお願いします。
2人分」
「あら、坊やは見た目より年上なのね~」
病めて~その獲物発見☆みたいな目で見るの~
「はい、こんなナリですが彼女と同じ18才です」
事前に年齢設定してます。
「あら、彼女は逆に年齢より落ち着いているのね~
私と同じ位かと思ったワ」
「「………(いやいや、あんたと同じ位はないって!)」」
「失礼しちゃうわね~
これでも花の28才よ~」
「「………(聞いてないし!興味ないから!)」」
何故か息がピッタリの僕とライブラさん。
やっぱり……
「山田様?(蹴り殺しますよ?)」
スタッ!
土下座です。(以下略)
用紙に必要事項を書いてカードを発行してもらえば終了……
しかし、なかなかカードが出て来ない。
待合室(居酒屋っぽいけど……)で待つこと1時間。
「ゴメンねぇ~発券機の魔道具が調子悪いのよ~
暇だったら好きなもの食べていいわよ?
おごるから」
「「いいえ、お構い無く」」
無理!ここで貸しを作ったらナニを要求されるか分かりません!
『山田様!失礼な想像をしてはいけません!乙(漢)女の勘は鋭いのです!』
久々の念話が注意喚起。
先生でもオネェさん(漢)の対応は難しいんですね……
「……」
「「………」」
命がいくつあっても足りません……
ドラゴンや魔王と戦闘してた方が全然いいです……
~…~…
「………」
それから20分後、ようやっとギルドカードが出来上がりました。
しかーし、僕は大変怒っております。
何故?
まぁ、見てくださいまし。
ヤーマ・D・タゥロー
男
獣人(猫)
18才
召喚士
体力:F
知力:A
運 :S
腕力:F-
魔力:S
耐久:A
俊敏:A
どう?
突っ込みどころ満載のこのギルドカード。
突っ込む前にライブラさんのも見てみて。
ライブラ・ウァサゴブレイン
女
獣人(猫)
18才
魔法剣士
体力:A
知力:A
運 :A
腕力:A
魔力:A
耐久:A
俊敏:A
同じ体を同じ様に改造してこの結果……
まぁ、ステータスのばらつきはいいとして(本当は良くないよ?)。
ヤーマ・D・タゥローって誰だよ!!
書いたよね?山田太郎って!
それも親切に漢字とローマ字両方で!
最悪、『YAMADA TAROU』って事で山田が名、太郎が氏になる覚悟はしてた。
それが……
「ゴメンなさ~い。
この街、無駄に勇者が来ることが多くて発音しにくい名前は言い易い様にランダム変換しちゃうのよ~
ステータスは……見なかった事にするわ」
ステータスを見て勇者か転生者と勘違いしたみたい(一般人は良くてB。Sなんてまず無いらしい)で、余計な詮索はして来なかった。
その対応はグッドよお姉さん(漢)。惚れないけど。
しかし、名前は頂けない。
勇者がちょくちょく来るなら漢字対応位しようよ。
せめてローマ字ぐらい現地表示に合わせてくんろ~
おら、怒っちまうぞ。
にしても……
ヤーマ・D・タゥローって……
海賊でもしろ!って名前ね……
偽名にする前に偽名っぽくなったって事で諦めますか……
にしても解せぬ。
「山田様……お怒りのところ申し訳ないのですが」
ん?ライブラさんが珍しく丁寧?
「ギルドマスターがお呼びのようです
(テンプレですね、ザマ)」
訂正。
全く丁寧じゃないです。
足だけじゃなく、口までSになってきてます。
喋ってないけど……
いやまあ、ライブラさんはいいとして、ギルマス?
なんか問題でも?
ふとオネェさん(漢)の方を見ると手を合わせて謝るようなジェスチャー。
ステータスがバレたらしい。
おかしいなぁ……
大分魔力やら能力やら隠蔽したんだけどなぁ……
何が引っかかったんだろう……
『山田様……レアスキルやギフト等の能力に関係する項目は【鑑定】のスキルがこの世界に存在しないから問題ありません。
しかし、召喚士という職業は……』
ん?ん?職業?
『種族として獣人は魔力がそこまで高くなく、魔法も身体の構造上上手く使えないので魔法専門職に着けないのが常識です』
えっ?でも、居ない訳じゃないよね?
『はい、転生者と魔王の手先の2択で』
うそ~ん。
『しかも召喚士はレア職業です。
エルフと一部の人属しかなった記録がございません』
やらかしてしまったようです。
ライブラさんと身体を分けたのが裏目に出たのかな?
コミュニケーション不足って意味で。
でも、後悔も反省もしません!
これが僕ですから。
『反省はしろ!この駄猫!』
いや~ん、ライブラさんのS度がどんどん上がってく~