おっさんとぬるま湯
冬の風呂場は冷え冷えとしている。ガラリと風呂の戸を開けてお湯の具合を確かめる。
「ぬるっ」
追い炊きのボタンを押しながら考える。又服を着るか、このまま待つか。むしろ先にシャワーを浴びるか。いや、そうしよう。
水を少し出してみる。床にはねた水の粒が足にかかる。すげぇ冷たい。結局全裸のまま冬の風呂場で数分待つことになってしまった。
そしてこのおっさん、どうしてこんな夜更なんかに風呂に入っているのか。
「ああ、俺ももうおっさんか」
?
その発言がおっさん臭いよ
「おっさん、臭くないよ」
それにしても、こんな夜遅くに風呂に入って、どうしたんです?
「仕事」
このおっさん、働き盛りである。
「そういうこと」
因みに、お仕事は何をされていらっしゃるの?
「なんでも良いでしょ」
じゃあ年収は
「普通だよ。普通」
ありふれたおっさんだ。
「じゃあ逆に聞くけど」
何
「君は誰なの」
ありふれた、語り手。ありふれたおっさんとありふれた語り手。それが僕たちの関係。
「おっさんじゃなくてそっちがよかったな」
じゃあ交代します?
「できるの」
できる。ほら、サン、ハイっ「
朝。なんだか妙な夢を見た気がする。自分で自分を見ていたような…
ともかく、今日も仕事はあるのだから、速く支度をしなくては。
てかここ、風呂場?寒いと思ったら。
声が上手く出ないけど、風邪ではないな。
何というか、まとまらないというか。
いや、そんなことを考える暇はない。
朝は何にするか……途中でおにぎりを買っていこう。
なんだよ、今日も寒いのか。速く春にならないものか。 」