どきどきの自己紹介
入学式が執り行われた。今年の新入生代表の挨拶も私になりそうだったが辞退し、聖に譲った。
「うららかな春の訪れと共に、私たちは月ヶ丘学園高等部1年生として入学式を迎えることが出来ました。校庭に咲き誇る桜の花、校舎から講堂までの道に散った花びらが桜の絨毯となり、私たちを歓迎しているかのようでした。本日は、私たちのために、このような盛大な入学式を行って頂きありがとうございます。新入生一人ひとりは、これから始まる高校生活に、、、、、、、、、、、、、最後になりましたが、これからお世話になる先生方、先輩方、私たち新入生を暖かい目で見守り、ご指導くださいますよう、宜しくお願い致します。新入生代表 桐ヶ谷聖。」
いつもとは比べものにならないくらい立派でカッコいいと不覚にも思ってしまった。
そして
「今年度から生徒会長に就任した神宮寺真人です。新一年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これから始まる学校生活に夢や希望を持っているのと同時に慣れない環境に不安や悩みを抱いていることと思います。、、、、、、、、、、、、、、、、在校生一同、これから皆さんと共に生活していくのを、楽しみしています。節度を守り、一緒に学校生活を楽しんでいきましょう。生徒会長 神宮寺真人」
相変わらず完璧にこなす我が兄に関心する。
こうして執り行われた入学しきは無事に終了し、教室に戻る。
そして毎度のことながら、自己紹介がはじまろうとした。
自分の席に座ると見知った顔が隣りにいた。
「ふふっ、これで4年連続ですわね。」
そう言って隣りに座る彼に話しかけた。
「こんなこともあるもんだな、、よろしくな、沙耶花。」
そう言って爽やかに笑ってくれるスポーツ男子、堤大輔くん。
もう4年も同じクラスになるもんだから、最初は戸惑っていた呼び方も今では呼び捨てまでになった。
「今年は、理恵様と一晴様とも同じですわね。」
懐かしいと笑うと大輔もそうだなと微笑んだ。
その後、自己紹介へと移った。
「磯本 章弘です。僕の家は建築業を経営しています。よろしくお願いします。初等部からこの学園です。」
案の定、家の自己紹介でうんざりする。
「石那田 友理佳。わたくしの家は服飾系のデザインをしておりますわ。わたくしは、中等部からこの学園ですわ。よろしくお願いいたします。」
「堤大輔。スポーツ特待生として中等部から月ヶ丘学園にいます。高等部でもバスケ部に入るつもりです。よろしくお願いします。」
すると何だ庶民かよと言う声がわらわらと上がる。私は少しムッとする。
「仕方ないよ、事実だからさ」
私の不機嫌な顔に苦笑しつつコソコソと私に話す大輔。
「桐生桜です。えっと、家は小料理屋をやっています。高校から特待生としてこの学園に入学しました。勉強も頑張りますが友達もたくさん作りたいと思います!宜しくお願いします。」
薄くピンクがかった栗色のボブに、クリっとした可愛らしい目。
私は確実にこの子がヒロインだと確信した。
「クスクス、小料理屋ですって。こんな庶民と一緒に生活するんですの?恥ずかしいわ。これだから特待生制度など無くせばよろしいのに。」
など心無い声と小馬鹿に笑う声が教室内を響わたる、
心配で彼女の方を見ると聞こえてないのかはたまた気にしないのか平気な素ぶりで少しホッとした。私は、とりあえずこのクラスの悪い空気を取り払うべく気を取り直して立ち上がった。私の眼差しを感じ取り、穂乃果、聖も身を引き締めた。
「わたくしは、神宮寺沙耶花でございます。自ら経営をなさっていないのに人様の家業を笑う人達とは仲良くはしたくありません。わたくしは、外部受験生も、スポーツ特待生とも相手の家など関係なく個人を見て判断してお友達になりますわ。」
ニッコリと笑って席に座る。
「西園寺穂乃果と申します。わたくしの家業なんて何をしているのか知りませんわ。興味ありませんもの。沙耶花様が黒と申すものは私も黒と思っておりますのであしからず。宜しくお願い致しますわ。」
穂乃果はそう言い放ちストンと座る
「桐ヶ谷聖。特に言う事はない、媚び売ってくるような奴は嫌いだ。よろしく。」
なかなか冷めた自己紹介だった。
さっきまでクスクスと笑っていたりしていた者たちは皆顔を青ざめシーンとしている。
これでこのクラスが庶民だとかそういった身分で差別することが
なくなればいいなと沙耶花は思うのであった。
沙耶花を知る元クラスメイト達は「「沙耶花様の地雷を踏んだ奴許すまじ」」心の中で思う事はみな一緒だったみたいだ。
「えっと、朝井一晴です。読書が好きです。宜しくお願いします。」
「伊吹絵里です。中等部ではチアリーディング部でした。高校でもチアリーディング部に入部しようと思っております。宜しくお願いいたします。」
その後は、誰も何も文句は言わず、スムーズに名前と一言いうだけの自己紹介となった。