抜かりはない
教室に到着し私は、扉を開きごきげんようと言った。
そこには、にんまりと笑う穂乃果と聖が待っており、
私は少しため息をもらし、もう一度彼らに視線を向けた。
「ごきげんよう、穂乃果様、聖様と申したいのは山々ですが、中等部卒業前にお約束した内容を覚えておいででしょうか?クラス編成はいじらないと。」
ジッと二人を見つめると二人は視線をそらした。
「いや、ほんっとたまたまだよな。こんな偶然あるんだな~」
「ええ、ほんとですわね、偶然ってすごいですわね。」
言い訳ぐるしいことを言う二人に少し溜息をつきしょうがないと気持ちを改める。
「わかりましたわ。わたくしも気の知れたお友達の一緒のクラスというのは嬉しいですが、もうこれっきりですよ。今回は約束を守ってくれた慶様と歓迎会は行くことにいたします。仲が宜しいお二人はお二人だけで参加してくださいませ。」
にっこりと笑うと二人は激しく落ち込んだ。
「お前らずるいよ!文句を言おうと思って来たけど、随分と反省してるみたいだね?」
一言物申しにきた慶が二人の落ち込み具合を見てそう言った。
「ごきげんよう、慶様。来週の歓迎会はわたくしと一緒に行って頂けませんか?」
私がそう言うと慶は目を丸くし驚いた。
「え?それ本当?僕を誘ってくれるの?いつもは4人だったじゃん?」
少し焦ったように言う慶。
「仲が良いお二人は、二人でお話しすることが沢山あるみたいで今回は別行動したいらしいですわ。」
そう言ってのける私に穂乃果と聖は涙目で何かを訴えてきてる。
私はそれを知らないふりをした。
「やった!あとで打合せしよう。ぜっかくだし色とか合わせたいし。」
そう言って慶は喜びコソッと耳元で許してやってと二人を擁護した。
これぐらいで効いただろうと二人の方を振り向き
「4人で交わした約束を破った罰は効きましたか?もう約束は破らないでくださいね?」
私がそう言うと縦にコクコクと頷く。
「じゃあ、仲直りですわね?」
私はそう言って手を広げて笑うと二人同時に私にタックルし抱きつきながら、おんおんと泣く。
「沙耶花様~ごめんなさい、、もう、約束はやぶりませんわ、、!」
「ごめん、、もう破らない。だから、俺も一緒に、、行きたいっ、、」
この光景をみているクラスにいる生徒はタジタジな感じだった。
「歓迎会のエスコートは慶様にしてもらいますわ。これは決定いたしました。それとここは教室ですわよ?」
私がそう言うと二人はスンっと泣き止み何事も無かったように立ち振る舞った。
「皆様、何も見ていませんわよね?」
「もちろんだよな?全然見てないよな?」
二人は周りにニッコリと笑い圧力をかける。クラスにいた者はコクコクと縦に首を動かす。
この1年、大変そうだなと私は苦笑いを漏らしたのであった。