あっという間に幼稚部
「あぁ、愛しの娘よ。今日も可愛らしいな。いよいよ月ヶ丘学園に入学だな。」
黒髪できっちりとヘアセットしている私を撫でまわしているこのダンディーな人は私の父、神宮寺信作である。
「ごきげんよう、おとうさま。そのようにお撫でになられるとせっかくセットした髪がみだれてしまいます。」
時すでに遅く私の髪は見事に乱れ頭の上に鳥の巣のような玉ができた。
ダイニングにきた母がムンクのような顔になりその後は父に怒りをぶちまけていた。
私は少し髪を整え席に行こうとした
「おはよう、紗耶花。ふふっ頭に鳥の巣でも作るのかい?」
そう言ってわたしの髪を手櫛で綺麗に整えていく兄
「ごきげんよう、おにいさま。これは先ほどおとうさまが容赦なくお撫になられたせいですわ。ですが、おにいさまが髪を綺麗にしてくださったので朝から幸せですわ。」
兄もご機嫌なのかあっという間に私の頭の上は綺麗に整えられていた。
「ありがとうぞんじます、おにいさま。」
私はニコっと笑った
「沙耶花の髪を僕がきれいにしてあげれたから僕も今幸せだよ。」
そう笑って言う兄を見て私はその笑顔に悩殺された。確実に兄は将来モテモテになるだろう
「お父様もお母様もまだ話し合いは終わらないみたいだから先に食べていよう。」
そう言って私を椅子までエスコートしてくれた。この歳で既に紳士とは感服します、兄よ。
「ありがとうぞんじます、にいさま。」
本日の朝食はクロワッサン、サラダ、フルーツだ。
私の家は健康志向によりこのメニューは朝の定番メニューである。
出来立てのクロワッサンはサクサクでサラダは朝採れの新鮮な野菜ばかり。朝食は至福の時である。
ふと顔を上げると父も母もいつの間にか食事についてた。
「沙耶花さん、今日から月ヶ丘学園に入園ですわね。お勉強も大切ですが神宮寺財閥の令嬢として粗相のないよう努めるのですよ。」
母が食事を止め私に言った。
「沙耶花は可愛いから沢山の男の子から話し掛けられると思うが友達はしっかりとした身分の子しか相手にしてはダメだそ。」
最後、父にしっかりと忠告された。
「はい。おとうさま、おかあさま。神宮寺財閥の恥とならぬよう気を引き締めてまいります。」
私はそう言って再び食事をはじめた。
良い家柄へ嫁ぐことが令嬢としての務めであると昔から言われてきたので諦めてはいるが元は平凡な庶民だったので友達ぐらい幅広く作りたかったなと少し残念な気持ちになった。