兄のヤキモチ
本日わたくし神宮寺紗耶花は月ヶ丘学園 初等部に入学です。
「ごきげんよう。お父様、お母様、お兄様。」
私は真新しい紺のセーラー服にスカーフは白そして胸元のポケットには純金の月にダイアモンドがキラリとひかるバッジ。そして安定の立て巻きロール。やはり入学式という特別なものでドキドキする。
「紗耶花、おはよう。今日も今日とて可愛いぞ。初等部の制服もすごく似合っている。こんなに成長が早いとは…。」
父がニッコリと顔を崩して笑顔で言った。
「そのバッジも紗耶花さんに似合っていますわね。さすが神宮寺一家の子ですわ」
母はわたしの姿を見て満足そうにそう言った。
このバッジは特別なものらしい。
月ヶ丘学園には"ルナ"という称号があり限られた者が手にできる称号である。
特別な者にしかこのバッジは授与されないらしい。
家が相当な権力者、財力がなければ入れない。いわばお金持ちの中のお金持ちにしか与えられないと言うことだ。もちろん私の兄もルナである証拠のバッジを胸元につけている。
「また紗耶花と一緒に登校できるね。うれしいよ。」
兄はそう言って私に微笑んでくれた。
「わたくし初等部でも精一杯精進してまいります。」
私は家族にめいいっぱいの笑顔を添えて言った。
「紗耶花お嬢様、ご入学おめでとうございます。また一段と可愛くなられて、黒川も嬉しく思います。」
そう言って黒川はニコニコと笑ってくれて車のドア開けてくれた。
「ありがとう黒川。これからもいろいろ迷惑かけると思うけどよろしくね。」
私はそう言うとはいっと笑って答えてくれた。黒川さんは笑顔が似合う青年だ。私がもう少し大きかったら完全に惚れていただろう。
車にのると兄が少し頬を膨らませジト目で私をみてきた。
「お兄様、どうかされましたか?」
私がそう言うと少し下を向いて拗ねたようにこう言った。
「僕の事が好きだって言ってくる女の子のような顔で黒川を見てたから……。」
兄はそう言って私の目を覗き込んできた。
私が黒川にキュンっとしたせいだろう兄がヤキモチも妬いた。
「気のせいですわ、お兄様。」
私がそう言うと嘘だとまた拗ねた。ここ数年でめきめきとシスコン度が上がってきている。もし私に好きな人が出来たらどうするんだろうとふと思ってしまった。
「安心してくださいませ。一番はお兄様ですわ。」
そう言ったら兄はパァっと笑顔になった。
「そうだよね。紗耶花には僕が一番だよ!」
そろそろ兄のシスコンを治さないと危ないことになりそうだなとつくづく思った。