目隠し鬼
目隠し鬼
………………
声が聞こえる。
「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ。」
どこからか聞こえる。
「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ。」
……………
目を覚ます。真っ暗だ。見慣れない夢を見た気がした。
しかし思い出せない。気のせいだろう。
とりあえずカーテンを開けよう。
いつもと変わらない日常。今日はいい天気のようだ。
そういえば今日は借りていた本の返却期限じゃないか。
なんて思いながら枕元においていた本を確認する。
「ああ、今日までだ。返しに行かないと。」
そう呟いて、図書館へ行く準備をする。
着替えて朝ごはんを食べた。
変な格好をしていないか気になるところだが、大丈夫だろう。
鞄に返す本を入れたかどうか確認して僕は外に出た。
あまり外に出ない僕にはいつも通る道も不安が多い。
ただの道のはずなのに何が起こるのか分からない。
一歩一歩前を確かめながらゆっくりと歩く。
何分かかっただろうか。目的地に着いたようだ。
この図書館にはいつもお世話になっている。
ここでないと借りられない本ばかりだ。
中に入り、いつも通り本の返却をする。
「返してない本ってもうないですよね?」
そう、ついでに職員に聞くと、
「はい、全て返却していますね。」
と返ってきた。
「それじゃあ、また新しい本を貸してください。おすすめは何ですか?」
と、これまたいつも通りのやりとりをする。
……………
そして、新しい本を借りて僕は図書館から出た。
しばらく歩いて僕は気づいた。外は来る時とは違って、涼しくなんだか湿っぽい。
「雨が降るのか?」
あいにく傘は持ってきていない。途中で降られても困る。
早く帰らないと。
急ぎ足で、しかし一歩一歩前を確かめながら家への道を歩いた。
……………
こんなに遠かったっけ。
周りは静かだ。
耳を澄ますと遠くから手を叩くような音が聞こえる。
僕はその音のする方向へと歩みを進めた。
しばらく歩くとイスのようなものに当たった。
歩き疲れたし、しばらく休もう。
そして僕は睡魔に襲われた。
……………
周りは真っ暗だ。
声が聞こえる。
「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ。」
どこからか聞こえる。
「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ。」
僕は声のする方向へ向かう。
「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ。」
手を伸ばす。おや?これは?
「あはは、捕まっちゃった。」
僕は目隠し鬼をしているらしい。
「それじゃあ、返してあげるね。バイバイ。」
あたりは真っ白な光に包まれた。
……………
目を開くとと刺すような痛みを感じた。
「痛い!」
そう叫ぶ。
しばらくその痛みは続いたが、目を閉じていると痛みが和らぐような気がした。
ゆっくりと目を開くと、その痛みはなくなり、知らない風景のようなものを感じた。
あたりを見渡す。知っているような、知らないようなそんな場所のようだ。
後ろを見る。見覚えがあるかもしれない。
それは建物らしきもの。それに近づいて僕は触る。
もしかしてここは小さいころ遊んだ神社じゃないか?
日差しを感じる。雨はもう降りそうもない。
どうせだから少しだけ本を読んでいこう。
イスに腰を掛け、鞄から本を取り出しページを開く。
何かに触れた。それを触ると、
「誕生日おめでとう」
と書かれていた。
おわり。
子供の遊び「目隠し鬼」をテーマにした短編です。
文章創作というものを初めてしてみました。難しいですが頭をつかうので楽しいですね。
さて、ジャンルとしてはオカルトが一番しっくり来ると思います。
ホラー映画のような直接的ホラーは無いですが、つながった瞬間に恐怖を感じる気はするかと思うのでホラーに分類しています。
推理については文章自体に推理を働かせてほしいという思いから推理ともしています。