ワタシとネコ。
あの時の記憶の断片……小学生に見えた私自身の居た場所を頼りに、当時の遊び場だった神社に向うことにした。
国馬駅から少し離れた場所にある児童公園の片隅に奉られた祠に向う。
懐かしさはあった。しかし確かに昔の遊び場だったが、記憶にある藪も石畳も無かった。
「……違う、ここじゃない」
私は確かに違うと断言出来た。まるで利きオレンジジュースで全問正解を出すぐらいの自信だ。
おかしなことに祠から私を呼ぶ声がした。それは私の脳に直接話しかける。
辺りを見ても誰も居ない……ただ祠の上に烏が一羽私を睨み付けている。
『これだから、合成獣みたいな半端者は駄目なんだよ!』
「………誰なの?……何処にいるの?」
『……ったく!猫族の合成獣、上だ上!』
私は声の指示に従い上を見る。やはり烏しかいなかった。恐る恐る尋ねてみる。
「……あなたは?……合成獣って?……何かご存じなのですか?」
『ハァ……主様の命令じゃなきゃこんな面倒な事やらねぇって……猫娘』
私は帽子が取れているのかと慌てて頭に触れる……良かった……あったよ帽子。
『あのな……猫の合成獣。主様が早く帰ってこいと言っていた』
「カラスさん……猫の合成獣が私なら……ご免なさい私にはエミって名前があるの……それに」
『名前を知りたいなら先に名乗れだろ?ウッサイね!一度で覚えろよ!俺様はミシェルってんだ』
「ミシェルさんにお願いがあるの……竹藪のある神社を探しているのご存知ですか?」
『合成獣に教える義理は無いけど、主様の頼みだから教えてやる!感謝しろよな!』
ミシェルに教わった場所は国馬公園に向かう途中にある刃隠神社かも知れないとの話。
通常の神社ならこの名前を使うなら御神体は、剣や刀が当たるのだが御神体は猫。
三毛猫が御神体。
エミは自分の中の獣の部分がざわざわと騒ぎ出すのを感じていた。
「刃隠神社まではそう遠くない!」
――――頑張れワタシ!
石段は中程迄は楽に行けたのだけどその後一段登る毎に体は重さを感じ社が視界に入る頃には立って歩くのは不可能で四つん這いに成って歩いた。
「後少し……」
石段の一段が大きく感じる。
最後の一段に手を掛けようとした時、上空から飛来したカラスによって私の身体は後方に押し出され石段をボールが弾む様に転げ落ちていった。
―――痛いよぅ…痛いよぅ……うづき先生……痛いよ。
舌を噛む事は無かったが、落下の威力は私が気を失うには充分だった。