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ー百香視点ー
今、私は豪邸の中にいます。訳がわかりませんが、一応大丈夫です。
どうやらここは、さっき話しかけてきた男の人の家らしい。話しかけられたと思ったらいきなり抱き抱えられて…しかもお姫様抱っこで。それで馬車っぽいのにいきなり乗せられたから誘拐でもされるのかと思ったら、私を抱き抱えた男の人がまた話しかけてきて、……何言ってんのかわかんなかったけどね。
豪邸に着いたら着いたでいきなり着替えさせられるし、しかもなんかドレスみたい。豪華なワンピースみたいだけど。
ご飯ももらったし部屋まで用意してもらっちゃって、明日お礼言わなきゃいけないな。言葉が通じないけど。
お風呂も入らせてもらったし、もう寝ちゃって良いのかな。それにしてもこのベッド超フッカフカしてるよ。魔性のベッド。
……私って幸運なのかな。いや、こんな所に来ちゃった時点で不運なんだけど、異世界転移系物語読んだ限り、勇者になってくださいとか、変な改造されたりとか、何日間も放浪とかさ、書いてあるじゃん。それに比べたら、1日で放浪おわるし、親切な人に助けてもらえるし、いや、まだ改造されないとは決まってないのかな?変な研究施設に売られたりしちゃったり。
……逃げれるように訓練しなきゃ。それと言葉がの勉強も。
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「なんか、夜逃げ見たいですね。」
「あたしもそっちの方が都合いいんだよ。」
街外れの雑木林と大きな壁の間、そこにいたのは夕方、旅の準備を終えて集合したフラベクトとカルナだった。
二人はさっき借りたばかりの箱型の馬車と馬を見ながら立ち話をしてた。
「それにしても、よくこんな大金持ったましたね、カルナさん。」
それを聞いたカルナはゴミでも見るような目で言った。
「……前々から旅に出ようと思ってたんだよ。だけど長い間貯めてたから大金になっただけだ。」
その言葉に対し、フラベクトは疑問をぶつける。
「長い間って…カルナさん何歳ですか?」
「19歳だよ。貯め始めたのが確か9歳。10年ばかし貯めてたってことだな。それとカルナでいい。旅の仲間だろ。」
「9歳から旅がしたいって考えるってすごいですね。それと、これからカルナって呼ぶんで僕のことはフラットって呼んでください。」
カルナは馬車に荷物を積みながら聞いた。
「…いいけど…なんでしょフラットなんだよ。」
それに対し、馬に餌を与えながら、フラベクトが言った。
「昔、自分の名前が上手く言えなくて、フラットって言ってたんです。実は今でもその名前気に入ってて。」
「へー、よっと。フラット、お前、馬操縦できるか?」
「操縦って馬に失礼ですよ。…まあできますけど。」
こうして、2人の旅は始まった。」