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自然のなか

作者: 大辺ユズル

 じぶんでも気づかないうちに、ちからが入ってる。


 山とか海とか、旅とか田舎とか、どこにあるとかないとか。

自然って、そうゆうんじゃない気がする。

きっと、どこにでもある。

ただそれに気づかなかったり、受け入れられなかったりするだけで。


 ぼくは自然がすきだ。

でも、ぼくは不自然だ。

なんだか不自然だ。

へんなちからが入りすぎている。

それに気づくたびに、ちからを抜こうとする。

なのに、知らずしらず、またちからが入ってる。


 そして“自然”を、どこかにさがしてしまう。

目をきょろきょろと、ふらふらと、足をのばして座りこむ。

息を切らして、座りこむ。


――どこに行ってもきっと同じ、なにも変わりやしない――

ふう、と息を吐いて、脈打つ焦燥にブルーになる。


「強くならなきゃ――」

そう言い残し、ぼくから去って行った人を思い出していた。

あれからぼくはどう変わっただろう。


 ある人が、ひとりで歩くぼくを見て、「強いね」と言った。

ほめられるようでうれしかったけど、なんだか切なかった。


――帰ろう。

(どこに?)

家に。

(家に……)

帰ったところで……。

でもとりあえず家に帰る、か。


 家、家、家。

家……。


 それでもやっぱり帰ってみると、家のなかはあったかい。

落ち着く、というのか、安心感はそれなりにあるのだろうな。

そとの風はちょっと冷たかったもんな。


 それにしても、“落ち着ける場所”というのはイイと思う。

自分が居ても良い場所、安心感のある場所、あったかい場所。

ちからを抜ける場所、自分をさらけだせる場所、しずかな場所。


 きっと本当は、“自分の心のなか”にそういうものがあると良いんだろうけど。

なかなかそういうのは見つけられない。

ぼくがさがした“自然”とおなじだ。


 ぼくは何か変化を求めているのだろう。

でも心のどこかで、本当は変わりたくないとも思っている。

変えたくない何か、変わってほしくない何かを、ぼくは守っているのだろう。

そうしていろんな“境界線”のようなものができていく。


 自分と他人、場所、環境、自然。

どれも本当は同じ空間のなかにある。

同じ空の下。

同じ大地の上。

この心だってそうなんだ。


 でもぼくは、その境界線を壊せない。

ぼくはいつも守りに入ってしまう。

自分にとっては大事なものだから、傷つけないように守るんだ。

そうしていつも、窓越しにそとを眺めている。


 何が良いと悪いとかはわからない。

でもぼくは、自分のなかに自然を見つけたい。

おおきな自然のなかにいる、ちいさな自然なぼくでいたい。

そのためには、きっといろいろ手放さなくちゃいけない。

境界線をやぶって、受け入れなくちゃいけない。

もしそれができた時、ぼくのなかにも風が入って、ぼくとそとはつながっていく。


 冷たい風はこわいけど、ぼくはそうしてみようと思う。

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