魔王 ドラゴンと戦う
「目を覚ましてるのであろう、ドラゴンよ」
まだ動かないドラゴンに向かい一言、意外と大きな声で叫んだ。
「ワタシを起したんだから覚悟は出来てるよね~」(※注 本当はドラゴン語で話していますがそれを人の言葉に訳してあります、もちろんワシには聞こえてるがな)
姿とは裏腹にかわいい声で喋りやがる、本当に幼体のドラゴンなのだな。ただここで油断でもしようものならいくらワシでも大ケガは避けられないだろう。
「もちろんだ、お前を倒す覚悟は出来ておるぞ」
「人がワタシを倒す、面白い事を言うね~いいよ遊んであげる」(※注 本当はドラゴン語で話していますがそれを人の言葉に訳してあります)
そう言い終わるが早いか、本体は一切動いてはいないがシッポの強力な一撃がワシ目がけて振り下ろされた。
「ごめんね、ワタシ手加減できないから、あっ、でも潰れちゃったからもう聞こえてないね」(※注 本当は・・以下略)
「そんな事はないぞ、しっかりと聞こえておるぞ」
「おっどろいた、あれで生きてる人がいるんだ」(※今後これも省略させていただきます)
「ではワシも攻撃させてもらおうかの」
腰を落とし深く構え一気にドラゴンの腹部に強力な一撃を打ち込むと鈍い音と共に砕けた灰色の鱗が粉になり舞い散るが、その強固な鱗はほんの僅かに欠けただけだ。
「あ~私の綺麗な体に傷をつけたね、もう許さないから、責任取ってよね」
「ほー、どのように責任をとれと言うんだ、よかろう、ワシの配下にしてやろう」
「違うよ、ちょっと痛いけど死んでね」
「面白い、ワシを殺すと、いいだろうやってみろ」
「本当にいいの、やっちゃうよ」
「くどい、ワシは気が短いんだ、お前の最高の攻撃と言うのを見せて見ろ」
「分かったよ」
その言葉と共に大きく空気を吸い込む音と同時に鈍い呻くような音も聞こえてきた。
「ブレスを吐こうと言う事か、よかろうそれでワシを楽しませてもらおう」
ドラゴンの吐くものと言えば火炎か氷、もしくは毒がメジャーな所か、他にワシが出会ったことがある奴では酸、雷、風、岩と言ったのもいたな、どれもワシは耐えきってどいつもこいつもワシの忠実な配下へと変貌させてやった物だ。さあこいつはどんなブレスを見せてくれるんだ。
こいつの口から吐かれた物は・・・白い水蒸気のような物、これは毒・・ではなさそうだ、何か顔に当たる物があるこれは小さな氷の粒か、他の攻撃はなさそうだ。
さすがは幼体まだワシにダメージを与えられるような攻撃力はないと言う事か、このブレスから考えると将来的には吹雪を吐けるようになるんだろう、もっと大きくなってから出会っていれば少しは楽しめたかもしれんのにもったいない事をしたのう。
それにしてもこいつのブレスは無限なのか、辺りはこいつの吐いた水蒸気で自分の指先すら見えなくなってきた、しかもその中の氷の粒はブレスの影響か激しくぶつかり合うようにワシを中心に渦を巻くように動きまくっている。
「こんな氷の粒ではワシにはかすり傷すらつけることはできないぞ、それとも目くらましがお前の攻撃なのか」
もちろんブレスは継続中のため返事はない。もういいだろう、そろそろワシの一撃でもう一度眠ってもらおう。
ただあまりにも大量の水蒸気のため先ほどよりも視界は悪化し、自分のいる方向さえ分からない、しかも太陽の光も遮られ辺りは夜のように真っ暗だ。
しかしその中で一瞬何か光ったように見えたが、気のせいか・・いや違うこの感じは雷だ、そうかこの水蒸気の塊は人工的に雷雲を作ったのか、面白雷雲を吐く奴は今まで出会ったことはないレアな種族だ。
しかし残念だ、それだけではワシに攻撃など出来ないではないか、それとも偶然に雷が当たるのを根気よく待つのか、しかしワシはそこまで優しくはないぞ。
可哀想だが目には見えないが、このすさまじい殺気を発していてはお前の居場所など手に取るように分かってしまうぞ。
一直線に気配の中心まで瞬間移動のごとくダッシュで向かい、先ほど鱗に傷をつけた時よりも溜めを大きく取りそのまま一気に解放・・しようとした瞬間、体に強い衝撃と共に間の前が真っ白になり一瞬だが体の自由が効かなくなってしまった。
偶然とはいえワシに雷が当たるとは運のいい奴だ、ただそんな偶然は二度はない、もちろん普通の奴だったら今の一撃で御臨終だろう、ただワシにしてみるとあの程度の雷は低周波治療器を最強にして使ってしまい一瞬驚くようなものだ。
回復したところでもう一度・・その瞬間また雷がワシを襲う、その威力は先ほどのより数倍以上の衝撃ではないか。
これは偶然じゃない、狙ってワシの所に雷を落としておるな、こやつやりおる、何度も言うがこの程度では何度やってもワシを倒せんぞ、そうかこの雷は攻撃用ではなく防御用か、だから攻撃しようと近づいた時だけ落ちるようになっておるのか。しかし困ったぞ、近づくと雷ではワシの攻撃出来ないではないか。
何を弱気になっておる、ワシに逃げるという言葉はないではないか、あるのは突き進むことだけだ、一度でだめなら二度、それでだめなら三度力の限り戦ってやろう。
「行くぞ」
己自身に気合を入れ直し、地響きにも似た大きな音を立て踏み込み、まずは一撃、それと同時に雷が襲う、これは予測の内だ、筋肉は強張るがそのまま二撃目をぶち込む、無理に動かしたため筋の切れる音が鈍く耳に響いてくる。
構うか、そのまま伸ばした腕は固い物にヒットし間違いなく何かを破壊した感触はある。どうなった・・・。