魔王 正体がバレる
「何でそんな所にいるのよ」
「おかしなことを言う小娘だ、魔王が玉座に座るのがそんなにおかしいのか」
サッシーの視線は魔王ではなく魔王の頭上を見ている。
「・・・あなたマオでしょ・・・」
「なっ、何を言っておる、ワシは魔王に決まってろうではないか、そのマオとやらはそこに転がっておる者の事であろう」
「うんん、絶対にあなたがマオです」
「しつこい小娘だもうよい、ワシは部屋に戻るぞ」
「ちょっと待ちなさい、・・・マオこっちに来なさい」
いつもの命令口調に魔王は一瞬ピックッと反応してしまった。
「ほら、戻って来なさいマオ」
「いや、だからワシは魔王で・・・」
「魔王様、既にバレてるですのぉ」
奥に隠れていたルナがワシの頭の上を指さしながらそのような事を言っている。
ワシの頭に『これはマオです』とか書いたタグが付いているとかはないだろうな。
頭の上に手をやるが、間違ってもそのような物は付いてない、しかしかすかにではあるが、手に触れる物があるぞ、これは一体なんだ。
それを無造作に掴み、目の前で開くとその中にはどこかで見あ事がある白い塊が入っている。
「ただのフワフワではないか、これが一体どうしたと言うのだ」
「マオが言ったんじゃないフワフワは再結合の作業をした人になつくんでしょ」
「良く知っておるではないかその通りだ」
「じゃあそのフワフワを結合したのは誰だったかな」
「それは・・・・」
正常な判断が出来ていればここは「知らんな」とか言っておけたのだが、その鋭い指摘にワシは口籠ってしまった。
もちろんそんな状態をサッシーが見逃してくれるわけはない。
「そうようね、それはマオが私と行った『初心者の森』で結合した子よ、だからそこで転がっているのがマオならそっちに行くはずじゃない、それなのに今はあなたの頭の上にいるわよね」
「そっ、それは・・・」
「魔王様をいじめるのはそれ位にしてほしいですのぉ」
隠れていたルナも姿を現し万事休す、完全にワシの正体がバレてしまったではないか。
「ほらね、やっぱりマオじゃない、一体そんな所で何をしてるのよ」
「だからワシが魔王であって・・・」
「またまたそんな事言って、それは劇の中での話でしょ、もういいからその特殊メークか変化の魔法を解いたら」
この顔が変装や仮面と思ったのか、サッシーは無礼にもワシの顔を引っ張り、若い時の顔に戻そうとしておる。
痛いではないか、これが今現在のワシの顔だ、反対にあの若い顔の方が魔法が掛かっておるのだ。
「痛いではないか、気が済んだか、もう良いではないか」
「魔法でもないみたいね、マオっていったい何者なのよ」
「だから言っておろう、ワシが魔王であると」
「本当なの?」
サッシーはこの姿を見てもまだ信用してないようだ、もちろん無理に信じてくれとは言わん、それよりもこの正体を知った以上口封じを・・・いや止めておこう、こいつに関わると前にも言ったような気がするがろくな事がない。
もっとも、学園に帰ってサッシーがワシの正体は魔王だったとか言っても誰も信用せんだろう。
「いい加減にお前がマオと呼んでいた者は魔王だったと信用せい」
「でも姿は全然違うじゃない」
「わっはははは、その位の事か、それはワシに掛かっていた封印が解けたからだ」
「封印?なによそれ」
サッシーにはワシが自分の力を封印し『魔帝』との戦い、そして学園に入学するまでの話しを掻い摘んで話してやったが、はたしてどこまで信用してもらえたのかはワシは知らんぞ。
「へ~そんな事が有ったんだ、まあいいはそこまでは信用してあげる、でもなんで今まで黙っていいたのよ、私を騙していたのね」
「そんな事はないぞ、学園に来た時に名前を聞かれた時にちゃんと『ワシは魔王様だ』と言っておいたのに誰も信用しなかったのだ、」
「それであんな名前なんだ」
どうやらワシの事を信用してくれたようだな、なかなか素直な子ではないか。




