魔王 復活する
「マオー」
助けに行こうとしているのか、それとも安否確認に行こうとしているのか動き出そうとしたサッシーの腕をニセ魔王は掴み、その行動を阻止した。
「安心しろ、あの小僧はすでに痛みを感じとらん、お前を救い出す者はもうおらんぞ」
ニセ魔王は不敵な笑みを浮かべてサッシーの腕をしっかりと握ったままだ。
「魔王放しなさい、マオを助けに行かせなさい」
「お主、今の状況を見てもワシが怖くないようだな」
「あなたなんか怖くなんかないわよ、まだマオの方が何倍も迫力があったわよ」
「ではそのマオとやらを倒したのは誰か言ってみるがいい」
「・・・大丈夫よ、きっとマオは倒されてなんかないから」
「サッシーよ、よくぞワシを信じてくれた、誉めてやろう」
「マオ」
ワシは飛ばされた部屋から土ボコリと水蒸気とも分からないものすごい量のスモークと共に登場した、ちょっと量が多すぎワシの姿は確認できないではないか、この演出はNGだろ。
まさかニセ魔王がこのスモークが引くのを指を銜えて待ってくれるわけはないだろう、いやここはチャンスではないか相手もワシの姿を確認することは不可能。
しかもあやつナンパの最中であったな、だったら奴の大体の位置はしっかりと記憶させてもらっておる。
狙いは一つ、ニセ魔王の動きを封じる事、それが出来ればほんの僅か1%以下の確率ではあるが、勝機はまだこちらにある。
前がはっきりとは見えないスモークの中を足音を立てないように細心の注意を忘れず(完全体のワシならそのような事は気にしないのだが、今はそんなプライドを守る時ではない)ニセ魔王が居たと思われる辺りをダッシュで目指す。
手の先に一瞬温もりを感じ、その先に有ったおそらくニセ魔王であろう大きな体を力の限り抱きかかえた、もう絶対に離さんぞ。
「サッシーよそこにいるのであろう、この声を目標にお前の持っているその剣でワシごと貫け」
「バカを言わないでよ、そんな事をしたらあなただって無事じゃないんでしょ」
近くからではあるがサッシーの声が響いてくる、これでワシの抱えているのがサッシーであると言うオチではない事が確定したな。
「そんな事分かっておるわ、その剣の特性を忘れたわけではあるまいな、魔王以外にはダメージを与えられないのであろう」
「本当にいいのね」
「早くやれ、これ以上はワシの体が持たんぞ」
「分かったわ、行くわよ」




