魔王 勇者と共闘する
しかし偽物とはいえ魔王は魔王、そのバカみたいな圧倒的な力でワシのガードの上からでも容赦なくパンチの雨が襲い、徐々にワシの巨体が持ち上がって行く。
そしてまたボロ雑巾のように吹き飛ばされ、先ほどとは違い、決して薄くはない壁をぶち破り、隣の部屋にまでワシの体は吹き飛ばされてしまった。
体中に激痛が走る、ワシは負けるのか、相手は偽物だぞ・・そのような事ワシが許すわけないであろう、完全勝利など望んではおらん、せめて一太刀・・・いやそのような消極的でどうする不様でもいい勝利を収めてやる。
「見てられないわ、私も助太刀させてもらうわよ」
ワシが吹っ飛ばされ土煙が舞う部屋より出て来た時、ニセ魔王に対し先程の劇で使った『魔王の剣』を構えたサッシーがニセ魔王に対峙しておる。
止めろ、お前が敵うわけないではないか、頼むからこの場から消えてくれ。
「わっははははは構わんぞ、小娘元気が有ってよいではないか、小僧一人でワシに歯が立たん事はすでに証明されておるからな、そうだリコよこれくらいでオッズが変わるとか文句は言わんだろうな」
「ハイ大丈夫ですよ、この学生さん以外で③に賭けた人はいませんですよ」
本当なのか、アスタルテも今回はワシの勝利に賭けてくれとらんのか・・よーし分かったぞ、どうあっても大番狂わせをさせてもらうからな。
しかしこのニセ魔王はワシの全盛期のように半端なく強い(いやもちろんワシの方がこの何倍も強かったぞ)。
サッシーと『魔王の剣』でも焼け石に水なんてことはないだろうな、いや待てよこいつは魔王ではないのだからこのふざけた剣でダメージなど与えられないではないか。
「サッシーよやはりここはワシだけで勝負させて・・・」
「何言ってるの、その体でまだ戦うつもり、ここは私に任せて休んでなさい」
「バカを言うな、よく見てみろワシは何ともないぞ」
そう言ってワシは腕をグルグル回して見せた。
「やっぱりいつもより調子悪いじゃない」
そんな事はないだろう、と言うよりワシが腕を回している所を見せたことがあったか?
本当に油断ならん奴だ。
「マオも早く構えなさい、私一人じゃ勝てるわけないんだからあなたも手伝ってよね」
言われんでもやるに決まっておろう、ワシがこの程度でやられるわけなかろうが。
「話し合いは済んだのか、それとも特別に遺言ぐらいは聞いてやってもいいぞ」
「そんなのいらないわよ、ほらマオも何か言ってあげなさい」
「・・・・」
残念がら急に振られたワシは一言も発することは出来なかった。
「わはははは、どうやら小娘の方が元気よさそうだな、気に入ったぞどうだワシの所へこんか悪いよういにはせんぞ」
「拒否します、何で勇者が魔王の所へ行かなくちゃいけないのよ、分かったわ、私があなたを倒すから目の前から消えてちょうだい」
サッシーよ何も今挑発せんでもいいだろう、ちなみのそのセリフは知らんだろうがそっくりそのままワシに言っているのと同じ事なんだぞ・・・。
その言葉の攻撃はニセ魔王に殴られた時よりもワシのダメージが大きいのは何でだ。
「ますます気に入ったぞ、よし配下ではなくワシの嫁にしてやろう」
ニセ魔王めさらに調子に乗りおって、ワシの事は完全に無視してるだろう、いいぞどんどん油断してくれ、その隙に攻撃させてもらうぞ。
その隙にワシは素早く背後に回ると、こちらも瞬時に放った強力な一撃は防御態勢を取っていなかったニセ魔王の脇腹に見事にクリーンヒットした。
どうだこれで呼吸が出来ないだろう。
そこで休む間もなくすかさず二撃目を打ち込む・・。




