魔王 とんでもない所に出る
複雑に入り組んだ抜け道をルナの先導で迷わず進み、うまい事カモフラージュされた壁の一部を音を立てないようにスライドさせると、そこに広がった光景は・・・鼻を衝く悪臭、見覚えのある場所、ここは男子トイレの個室の中ではないか。
誰だこんな所に脱出用の出口を設計したのは、もし誰かが使っていたらどうするつもりだったのだ。
いやその心配はないようだ、この部屋は使えないように大きな文字で扉と便器に『故障中』と書かれてある。
他にも個室は沢山ある、紙も用意されていないような所を無理して使うような奇特な奴はいないであろう。
文句も言いたいがここなら誰にも見られずに出てくることは可能だ、後は音を聞いてトイレに誰も入っていないことさえ確認すれば故障中の部屋から出たのを怪しまれることはない。
もしワシ一人だけであればこのような道迷ってしまっておっただろ、ここは素直にルナに礼を言っておこう。
そう思い壁の方に向きなおした時にはすでにルナの姿は今出て来た抜け穴へと消えようとしていた。
「ルナよどこへ行くのだ」
「私も女の子ですのぉ、男子トイレからなんて出れないですのぉ」
一言だけ言うと隠し扉を元のようにし(一目では絶対に壁と区別が出来ない状態)、薄情にもワシをこんな所に残しどこかへ行ってしまった。
誰も居ない事を再度確認し、外へ出たと時を同じくしここに走り込んでくる足音と叫び声が。
「いたぞ、マオこんな所で何やってんだよ」
誰だお前は・・。
「何言ってるクラスメイトの顔を忘れるなよ、僕は・・・・」
「名乗らんでもいい、ワシに用があるんだろ、言ってみろ」
「・・・早く着替えないともうすぐ出番だぞ」
もうそんなシーンまで来ていたのか。
なんら策を練る事すら出来ないではないか、このままぶっつけ本番であの面白い剣をかわす方法を考えねばならぬのか。