魔王 第1幕『北限の城制圧』を演じる 2
「一体我が体に何をしたんだ」
人が余韻に浸っておるのにこやつは空気が読めない奴だな。
「お主には民の事を第一に考える呪いを掛けさせてもらった、民の頼みは一切断る事は出来んぞ、それがいかに無理難題だとしてもな、最も今はお前の所に民などはおらんがな」
もちろん拒否、裏切り、この城からの脱走は即死を意味しておる気を付けろよ。
「ここまではワシの話だ」
「ここまでは・・?」
シュヒールは何の事だと言った表情になっておる。
「お主はワシの部下ピルカを弄んでくれたのだったな」
せっかく色気の戻った顔色がまた真っ青になっている。
「もう一つ呪いの上書きをさせてもらおう」
同じく指を額に当て術を唱えた、しかし何の変化もない。
「何ともありません、脅かさないでください」
シュヒールは安どの表情を浮かべているが、まさか呪いの不発などと言う事はなくしっかりと掛かっておる。
「お主にかけたのは鼠化の呪い、人が見ていないとネズミになってしまうのだ」
よかったな、この誰も居ない最北の城ではお主は一生ネズミの姿のままかもしれんぞ。
最初の呪いの力で城から出る事も出来ない可哀想な(自業自得だが)シュヒールを残し我らは城を後にした。
出た後、中からネズミの悲痛な叫び声が響いていたのは言うまでもない。
「では帰るぞ」
世界制覇を終えワシは悠々とこの城へ凱旋するのであった。
・・・・数年後・・・・
平穏な日常に飽きたワシは一つ面白い事を思いついた、ワシを悪人にし、魔王を討伐する者を募集しよう。
それで始まったのが勇者による魔王討伐戦であったが、平和な時代が長く続いていたのが原因か、ワシを本気で楽しませてくれるような奴は現れなかった。
そしてさらに数年後、最後の勇者の登場となったのだった。




