魔王 最後の朝を迎える
「今日は遅刻させないわよ」
ワシを起すのは勿論サッシーだ、いくら鍵を掛けても無駄な事がワシにもわかり、今では部屋には無施錠で眠っている。
そのため今では入ってくるのはサッシーだけではなく、クルリは当り前のようにワシの布団に潜り込んでおるし、猫なのを良い事に今はルナも布団の上で丸くなっている、きっとソールも入っていたのだろうが、朝食の準備のため今は台所から包丁の音と何かを焼く良い匂いと共に忙しく動き回っている音が聞こえてきている。
「安心せい。ワシはすでに起きておるぞ」
もちろんそんな事はない、たった今目が覚めた所だ、ただいつものように9時から6時までしかりと眠ったため目覚めた瞬間から即全開で行動出来るだけだ。
「そう言うサッシーは準備は出来ているのか」
「もちろんじゃない、完璧よ」
そう言ってサッシーはワシの前で着替えた制服を見せるためかその場でクルっと一周回って見せてきた、おや何かいつもと違うような気がするんだが・・・。
そうだ、いつものようにクリーム色の制服だが襟についているラインの柄と胸の赤いリボンがいつもより大きいんだ、一体どうしてそんな服装をしておるのだ。
「マオ、聞いてなかったの、今日は魔王の城に行くのに正装でって言われたでしょ」
そんな話は聞いとらんぞ、これもD組は関係ないから聞かされとらんかったのか、それに正装は入学の時に着て以来押入れの奥の方へ突っ込んだままだったぞ、まさかあれを今から発掘しろというのか。
「そう言うと思ってた、ちゃんとマオのも用意してあるわよ」
一体いつの間に、ワシは体がデカイから特注で作ったんだぞ、既製品ではワシの体には合わんぞ、それともあの衣類の山の中から発掘したのか。
「ソールとルナに見つけてもらってたのよ、それにちゃんと片付けなさいよね発掘するのに3日もかかったのよ」
「私が洗濯したにゃ」
「マオサマ、ワタシも手伝ったよ」
いつの間に聞いていたのか朝食を準備しながらソールが叫んでいる、それに布団から首を出したクルリまで、そうかあの山を片付けてくれていたのか、それは礼を言わねばならんな。
と言うわけでクルリの頭をクシャクシャっと撫ででやる事にした、ソールには後でやってやろう。
よし、ワシもクルリ達に用意してもらった制服に着替え朝飯へと向かった、いつもは着崩していたが、この制服も今日で着修めだ、さすがに今回だけはきちんと着ておいててやろう。
「マオサマ、今日もかっこいいよ」
クルリは目を大きく見開き、お世辞を言うわけがないのでこんな恥ずかしいことを言っているが本心なのだろう、よし誉めてやろう。
「そうね、馬子にも衣装と言う所ね」
サッシーそれは余計な事だ、クルリのようにいつも通りと言ってくれればいいだろう。
ここでの豪勢な最後の朝食をいつののように済ませ、いよいよワシの城へ向けて出発することになった。