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魔王の今現在 寮にて

「今帰ったぞ」

 一人暮らしの部屋にワシの声が響き渡る。


「魔王様おかえりなさいませですの」

 奥の方から女性の声がする。


「おう、帰ったぞ、そうかもうそんな時間になっておったのか」

「はいですの、先ほど月が昇りましたの」

 そう言いながら現れた女の子は褐色の肌に黒いメイド服、そして手には白い子猫を抱いている。


「魔王様お食事準備は出来ていますの、作ったのは私じゃなくってソールちゃんの方ですの」

「そうかソールの方が作った飯なのだな、それならば安心して食事にすることが出来るな」

「魔王様それはどういう意味ですの」

「気にするなルナ、大した意味はない」

 本当に大した意味はないぞ、ただルナの飯はその昔我が軍を壊滅状態に陥れた実績を持っておるだけじゃ、もちろんそんな物でワシが弱る事はなかったがな。


「魔王様今日はご機嫌がよろしいですの」

「そうかそんな事はないがな、変な小娘に帰りを阻止されておったしな」

「それで今日はお帰りが遅かったのですの」

「そうだ、ソールよ明日は八時に起こしてくれるか、その小娘に公園に来るよう言われておるのでな」

「にゃ~、にゃ~」

 魔王が言うとルナが抱いている白猫が返事をしている。


「魔王様、告白でもされたのですかの」

「告白?そんな事ではないワシと戦いたいらしいぞ、本当に無謀な奴だ、久しぶりに全力でも出してやるかの」

「魔王様、お忘れですかの、それは出来ないんですの、城に戻れないんで全身の封印はしっかりとされたままですの」

「そうであったな、力を出す事もなかったんでそんな事はすっかり忘れておったわ」

「魔王様も自業自得ですの、城を抜け出すのに自分の力を一〇〇〇分の一まで落としてしまわれるからなの」

「仕方いではないか、城の門には能力が非常に高い者が出入り出来ないように巧妙に仕掛けがしてあったからな」

 表向きは外敵からの侵入を防ぐと言う事たが(もちろんそんな奴らがいたらワシが瞬殺してやると言ったのだが、ワシが城を留守にしている時に攻め込まれたら困ると言う事で渋々許可したのだが)ワシが城から逃げ出さないように、と言うのが本当の目的だと気が付いたのは設置が完了してからだった。


 それで城の中で自分自身の魔力、パワーなどを封印する術式を執行したのだ、もちろん途中でそれが切れて城の中に入れないと言う事が無いようこの封印の解除も城の中のワシの部屋中でないと出来ないと言うおまけも付けておいた、まさかそれがこんな事態を招くとは思ってもなかったんだがな。

「まあ良いわ、飯も食ったしワシはもう寝るぞ、やはり睡眠時間は少なくとも九時間はほしいからの」

「分かりましたなの、すぐに床を用意しますの、それともお風呂にされますかなの」

「そうだな、では風呂にしよう」


 風呂場は全学生が同時に入っても全く問題がないくらいの大浴場はもちろんあるが各部屋にも小さいながら付いている。

 もちろんこれもワシのリクエストでここを作る時に各部屋にセットさせておいたのだがな、これが意外と便利だ、大浴場ではワシの秘密が漏れてしまう可能性があるからな。

 服を脱ぎ捨て全裸になると背中や胸には若かりし頃(まだ魔王の自覚がないころ)無謀な戦闘をしていた時に受けた傷が無数に付いておる。

 ワシとしては見られても問題ないのだがソールとルナの奴が「人に見せちゃだめにゃ、魔王様の正体がバレてしまいますにゃ」とか言ってワシを大浴場に近付かせてくれんのだ。


「魔王様お背中をお流しますの」

 バスタオルを体に巻いたルナが恥ずかしそうなそぶりも一切なく入って来た(まさかと思うがこれがルナ達の本当の狙いではないだろうな)。

「いつも通り任せよう」

 最初の頃は驚いていたが、最近はワシの方もいつもの事になっているので体をルナに任せ、後ろを向きイスにドッシリと腰を掛けた。


「魔王様、では洗わせていただきますの」

 しっかりと泡立てたスポンジのような物でルナはワシの体をくまなく磨き上げ、それが終わると一気に頭から水を掛けられ、仕上げに大きなバスタオルによって最後の一滴まで体中の水滴をふき取って終了となった。


「魔王様、終わりましたの」

「いつもご苦労」

 バスローブとはいかないが大きめの布を纏い、そのままルナがセッティングしたベットヘと潜り込んだ。


 そこにはすでにあの白猫がベットの右側で丸くなって眠っているし、どうやったのかさっきまで風呂場にいたと思ったのにルナもベットの左側に横になって待っている。

「お前ら、ワシより先に寝るとは何事か」

「魔王様、気にしないですの、早く寝るですの」

 このやり取りはいつもの事なのでワシの方も本気では怒ってないと言う事にこいつらも気付いているんだろう、ワシの睨みもこいつらには通用しないか。


 一人と一匹の間に大の字に倒れ込むと一瞬にして眠りに就き、その後すぐに何が起こっても分からないくらいの深い眠りへと落ちて行った。


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