魔王 勇者のピンチを救う
10分後、包帯を腕に巻いた生徒がヨーコ先生に連れられ帰って来た。
「この子はドクターストップでお願いね」
「ちょっと待ってくださいヨーコ先生、本番は明日なんです、痛み止めとかで何とかならないですか」
「残念だけど腕が完全に粉砕されてるの、私の調合薬と回復の呪文で形にはなんとか出来るけど、さらに24時間絶対安静でやっと腕が動くようになるわ、だから剣を振るなんて絶対無理よ」
サッシーはその答えに絶望の表情を浮かべている、それに魔法使い役の子や僧侶役の子は抱き合って泣いてい。
この演技は一年生の最大イベントで、出演するだけでかなりの名誉になると聞いている、ワシは中止でも構わんがこいつらには酷な話だな。
「サッシーよお前が勇者役をやればいいではないか」
簡単な解決方法である、毎晩のように台本の読み合わせをしているし、総監督であるのだ、それ位は出来るのではないか。
「私が・・・無理よ、役者には向いてないから監督をやってるのよ」
「お願いします、サッシー、あなたしか頼ることが出来ないの」
魔法使い役の子も同じ意見のようだ。
「そうだぞ、君ならできると思うぞ」
戦士役のごっつい奴も賛同している(こやつ本当に同級生か、きっと巨人族の血でも入ってるのだろう)。
「やってくれるよな」
おっと、ここで天井で待機していた黒の人役も飛び降り、サッシーの手握っている。
これだけ言われてるんだ拒否は出来ないよな。全員の期待の目がサッシーに注目し返事を待っている。
「分かったわよ、やるわよ、やればいいんでしょ」
ついに観念したサッシーはしぶしぶではあるが勇者役を引き受けてくれたようだな。
そうと決まれば早速練習再開だな。各自持ち場に付き直し最後のサッシーにしてみると一発本番の通し稽古が始まった。




