魔王 入学する
「分かりました、あなたの入学を許可しましょう」
ここは学園の校長室だ。
ワシはすぐに学園に行き、入り口の守衛にあの推薦書を見せるとすんなり中に入ることが出来、そして今はこの窮屈な部屋にいるのだ。
そして目の前にいるのは頭の薄くなった勇者である。
「あなたの身分書を作りたいのですがあなたの名前は何と言いますか」
「お主も分からんか、ワシは魔王様だ」
「ハイ分かりましたそれで登録しましょう」
そう言って手渡された身分書に書かれた名前が『マオ=ウ=サマダ』だ(この時よく確認しておけばよかったのだが、この名前に気が付いたのは正式に入学した後で、その時にはすでに変更猶予期間も終わり変更を許してもらえなかったのだ)。
「ところでワシは何処に行けばいいのだ、このパンフにはクラスは能力順とか書いてあるが、もちろんワシはA組であろうな」
「先ほどの適正試験の結果あなたは・・・・」
筆記、実技やわけのわからぬ質問など散々させられ、やっとこの校長室へと入って来た所なのだ。
もちろんワシの実力からすればA組決定であろう、いやそれ以外は考えられん。
「あなたはD組決定です」
「ほうD組となdecency(品位)のDだな、この溢れ出す品位を隠しきれなかったようだな」
「いえいえ違いますよABCDのランクD、つまり勇者の才能はなしと言う事です」
勇者の才能がない、そうだろうワシは勇者の敵なのだからな、しかしワシはどうしても勇者にならなければならんのだ、というわけだA組にせい。
「それは出来ませんよ、えーと魔力、体力、知力等は間違いなくA組レベルですが、勇者に一番必要な能力がD組レベル以下です」
「それは一体なんじゃ、一番必要な能力とは」
「それはですね・・・ほほほ、この学園で学んでください、ここで言っても無駄でしょう」
こんな時に勇者のスマイルで上手い事かわしてくれる、よかろう勇者になれるのならクラスなど関係ない、力はあるのだ勇者に必要な能力などカバーしてやる。
「お分かりいただいたところで入学の説明はよろしいですか」
ああ構わんとも、D組から初の最強の勇者誕生を見せてやろうではないか。
「では寮の部屋はどうします、無料の大部屋から個室まで揃ってますが」
そんなのは決まっておろうワシは個室以外は受け付けれんぞ、と言うかワシと同室で耐えれるような者がおれば別なのだがな。
「個室希望ですか、大丈夫です空いてますね、ただ・・」
「ただ何なのだ、勿体付けず早く言ったらどうなのだ」
「最上級の部屋のみ空いているのですが・・・少しお高いのですよ」
「そのような物すぐにでも払ってやろう」
「魔王様にゃ、私達はお金を持ってないにゃ」
ワシの後ろでソールが呟いておる。
「安心せいワシが何も持たずに出歩くとでも思っておるのか」
「そうなのかにゃ、何も持っていなかったように思ったにゃ」
「お前に渡した物があるであろう、出歩くときは必ず持って行くようにと」
「これかにゃ」
そう言って見せているのは可愛い猫の形のヘッドの付いたペンダントだ。
「そうだそれだ、その裏側を見てみろ」
その裏にはわずかだが隙間があり、それを取り除くと中から金貨が一枚転がり落ちた。
「部屋代はこれでいいな」
そのコインを見た校長は言葉に詰まっているようだ。
ワシの知っている時代であれば金貨が1枚あれば1年は暮らしに不自由せんはずだ、それともここの部屋代はそんなに高いのか、まさかワシの眠っている間に貨幣価値がとんでもなく変わったなどと言うオチはないだろうな。
「君、このコインはどこで手に入れたのかね」
驚いたような表情で校長が言っているが本当に失礼な奴だ、これはワシの持ち物に決まっておろうが。
「本当にこれを使っていいのですね」
「当たり前だ、と言うか今現在ワシの全財産はこれだけだ」
「分かりました、それでは受け取りましょう、これで卒業までの寮費すべて完納とさせていただきましょう」
「なに、その金貨はそんな価値なのか」
驚いてしまい、少し大きな声を出してしまった。
「すいません、生活費、食費も含めさせていただきます」
脅してしまったようだな、悪いがそう言うなら喜んで受け取るとしよう。
後で風のうわさで聞いた話だが、あの金貨は第一期魔王金貨と呼ばれ、今現在この世界に現存している物は2枚しか確認されてなく、それが1枚あれば人1人が一生遊んで暮らせる価値があったらしい。
それは惜しい事をした、と聞いた時に一瞬思いもしたが、あんな物ワシが城に帰ればいくらでも有ったような気がするぞ。




