魔王 疑われる
しかしそこにあるはずの枯井戸が無いではないか、どうやらここも何者かに気が付かれたようだな。
目の前に有ったのは大きな岩で、おそらくこの下に古井戸があるはずだが完全に封印されておるではないか。
仕方ない、こうなったら正面から堂々と行くしかないようだな。
そして正面に帰って来た時、城の中から出てくる奴がおるではないか、これは運が良い、一体誰だワシを知っておる奴ならいいのだが。
おお、あれはワシと一緒に暴れておった『無限の力』サルトムントではないか、よかったこいつなら話が分かる。
「おい、サルトムント、ワシだ城に入れてくれ」
「なんじゃいワレ、わしゃの名前を気安く呼んどるんじゃい」
口が悪いのは今に始まった事ではない、それ位で怒るワシではないわ。
「ワシだワシ」
そう言いながら大きく手を振り近づいて行くのだが、気が付いて無いようだな、ワシの事を全く無視をしておる。
「聞こえんかサルトムント、ワシだと言っておろうが」
「じゃからワレは何者じゃ言うとろうが」
「いくらお前とは言え、この顔を見忘れとらんだろうな」
サルトムントは昔から力はあるのだが頭が弱い所が弱点ではあるのだが、さすがにワシの顔まで忘れることはないだろう。
「何じゃい、そんな顔知らんわ」
何とそんな事まで忘れてしまったのか、仕方ない名乗ってやるか。
「ワシじゃ魔王じゃ、これで思い出したであろう」
「『魔王じゃ』やと、わははっはは、ふざけるんじゃねぇ、わしゃ今まで魔王の所におったんじゃそれに魔王はそんなは顔じゃないやろが」
今までワシに会っていただと、信じれんがそいつはどんな顔をしておるのだ。
「さあ帰るんじゃ・・そうじゃお前のような野心家は久しぶりじゃからこれをやるわ」
そう言ってサルトムントが差し出したのはまた勇者養成学園のパンフレットだ、どうあってもワシを勇者にしたいのか・・おやそれにもう一枚の紙が付いてるぞ。
「わしゃの推薦状じゃこれで無試験で入学出来るけいのぉ、しっかり勉強せいよ」
そう言うとサルトムントはどこかへ走り去ってしまった。




