魔王 目覚める
「魔王様、そろそろ帰るですの」
ルナ、そう言われてもすまんがまだ体が動かんのだ、「少し休ませてくれ」そう叫びたいが声に出せないため、一生懸命にワシの髪を引っ張って連れて行こうとするが、もちろんワシの体は動くことはない。いやこのままではせっかく生きていたのに再びあの世に送り届けられてしまうではないか。
「ルナちゃんそんな事をしちゃだめにゃ、少し眠らせてあげるといいにゃ」
「分かったの、だったら私達のいた部屋に運ぶの」
今度は二人に引きずられ(時間がかかったが)ルナとソールの避難していたあの小部屋へと連れてこられた(中は思った以上に広いぞ)。
しかもそこにはいくつもベットがあり、その中の一つに乱暴に放り投げられてしまった。
「ここで寝るにゃ、元気になったら帰るにゃ」
悔しいがそうさせてもらおう、そう思った瞬間今までの緊張が解けたせいもあったかもしれんがワシは強烈な睡魔に負け、すぐに深い眠りに就いてしまった。
「おはようございますにゃ」
どれくらい眠ったのであろうワシを起そうとする聞き覚えのあるいつもの声が聞こえる。
「今日も起きないかにゃ、じゃあ私もまた寝るにゃ」
今日も・・・と言う事はワシは何日も眠ったままだたと言う事か。
しかし体が・・・おお、動くぞさすがワシだ何たる回復力。
よしこれで城に帰り約束通り勇者の学園をここに作ってやろうではないか。
「起きろソール、すぐに城に帰るぞ」
たった今寝たばかりのソールを叩き起こす、ところでルナは何処に行ったワシがここにいることを知らせるために城にでも帰ったか。
「おはようございますにゃ、魔王様」
「おお、起きたかソールよ、ところでルナは何処に行った」
「ここにいるにゃ」
そう言って布団から黒猫を引っ張り出した。
「この猫は何だ、一体何が有ったのだ」
「『魔帝』に言われたにゃ、永遠の若さをあげるってにゃ、その代り一日の半分は猫の姿になるにゃ」
そうかそんな事をしていたのか、なるほどこれがプレゼントと言うやつか、やっぱり奴は若い女が好きなようだな。
「まあいいだろう、それではワシの城に『魔帝』を退かす事に成功した事を手土産に凱旋と行こうではないか」
「ハイにゃ、では帰るにゃ」
ソールはまだ眠っているルナを自分の頭の上に乗せ、ワシの帰り支度を始めた。
かと言って着の身着のままの態勢で来た上、戦闘でそれすらないはずなのだが・・。
そうか全裸で凱旋せねばならぬか、まあ良いワシの完成された肉体美を見せるのも良いな。
そう考え少し腕を上げ、ポージングをしてみる、なんだかここに来る前より筋肉のハリが良いような気もするが・・・そうかこの戦闘でまた鍛えられたようだな。
ワシの配下となったあの勇者を倒した後にはワシを倒そうとやってくる奴も少なく、ほぼ書類に目を通す日々が続いておったから体が完全に鈍っておったからな。
「魔王様これにゃ」
どこから用意したのかワシの服がそこに有るでないか、まさかこれもアヤツのプレゼントとか言わないだろうな。
「安心するにゃ、これはルナがここに有った布とかを使って作っていたにゃ」
そうかルナの奴が、ほめて使わす、そう言ってソールの頭の上で眠っている黒猫のルナを乱暴にさすってやった。
「よし帰るぞ」
勢いよく眠っていた部屋を飛び出すと顔に太陽の光が当たる、これはワシにしてみると何日ぶりの太陽の光なんだろうな・・・ちょっと待て、何で太陽光が当たるんだワシは地下の『魔帝』の部屋に居たはずなんだが。
「それはにゃ、『サービスだよ、すぐに帰れるようにしてあげる』って『魔帝』が言ってたにゃ」
それでこの小部屋だけ地上に置かれているわけか、あの地下は今どうなっているか・・それはあまり気にしないでおこう、まあ落ち着いたらもう一度探検にでも行ってみようではないか。
それに今ワシの見ている風景にはあの崩れかけた建物はない、しかし目の前には立派な建物がそこには建っている・・・この建物は一体なんなんだ、いつの間にこのような物が、これもアヤツのプレゼントとでもいうのか。
それにしても大きな建物だ、これは一体なんなんだ・・そう言いながらこの建物を囲っている高い塀沿いにかなりの距離を歩いたところで大きな門が見えてきた、そしてその門にかかる大きなアーチには『魔王立勇者養成学園』と書かれている、さらに中では学生と思われる若い声が響いているではないか。
まさかワシは1年以上眠ってしまったいのか、これは急いで城に帰らねばならんな、おそらく城の奴らはとてつもなく怒っておるだろうな。




