魔王 最強の魔法に対峙する
『我は求める、この世界におけるすべての始まりとなるすべての物を
我は求める、この世界におけるすべての終わりとなるすべての物を
我は求める、この世界におけるすべての創造となる物を
我は求める、この世界におけるすべての破壊となる物を
すべてを見、すべてを聞き、すべてを嗅ぎ、すべてを味わい、すべてを感じ
そこにある扉を世界へ持ち出す
我が力、我が心、我が命、すべてを捧げ扉の鍵を得る
扉を開きし時、無にする力をこの手の中に
終わりと始まりの力
時空消滅!!!』
『魔帝』が呪文を唱え終え、放たれる衝撃に身構えるが特に変わった様子もない。
なんだやはり脅しであったようだな、呪文を唱える間待ってやったのに張り合いの無い奴だ、約束だったなこれでワシの勝ちと・・・。
いやそれは時期尚早だったようだ、上空に掲げた握り拳の中からとてつもないエネルギーが溢れ出そうとしている。
これはまずい逃げろ逃げるんだと本能が言っている、しかし逃げるわけにはいかない、『魔帝』との約束は耐えきる事ここで逃げてはワシの負けだ、いや今から逃げた所で間に合わない。
それならばやはりここで小細工なく、正面から受けるだけだ。
こちらの覚悟が決まったのを確認するように『魔帝』は固く握った手をゆっくりと開き始めた、すると辺り一面は漆黒の闇・・違う、自分の指先すら見えないほどの眩いばかりの光に覆われ、体中を鋭い刃物で何度も切り裂かれたような激痛が走り、その苦痛が終わると視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚すべての感覚は破壊されてしまったのか、一切の苦痛すら感じなくなってしまった。
今現在の感覚は自分が立っているのか倒れているのか、はたまた空中に投げ出されているのかそれすら分からない状態と言ったところだ。
何とか動かすことが出来るのは自分の瞼だけ、それを精一杯動かし、何とか目を薄っすらとだが開くとそこで見えた物は無・・・何もない誰も居ない無・・・。
これは一体どうしたことだ、ワシは別世界に飛ばされたのか、それともアヤツの魔法はこの世界自体を消滅されるような物だったのか。
しかしこの感覚は・・・まさかワシは死んでしまったのか・・・それならばこの何もない空間が俗に言うあの世なのか・・・お花畑とか河原ではないのだな、意外とつまらん所だ。




