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魔王 旅立ちの時を語る

 話すのは『闇の森』へ『魔帝』を退治するために出かけようとしている夜からでよいな。そこまでの話は先ほどの演劇でほぼ合っておるからな。



 魔王の城の奥、重々しい扉から明かりが漏れている、ここは信頼のおける数名しか入る事の許されていない魔王のプライベートルームである(ワシとしては本当は誰でも入室OKにしたいのだが、警護班からそれは勘弁してくれと言う事でこんな状態になっておる)。

 それは良いとして、中では今まさにこの100年間毎夜のように行われている、とある儀式の最中であった。

「ルナとソールよ今日もよいな」

「分かりましたの」

「分かったにゃ」

 今この部屋には所狭しと複雑な魔方陣が書かれ、さらにその周りで数種類の香炉が焚かれている、その中央で素っ裸の魔王がルナとソール(二人とも人型)に挟まれ仁王立ちの状態で何かを待っている。

「おおう、来た来た来たぞ、これだこれ、毎晩やっておるが気持ちの良い物ではないな」

 魔王は全身から噴き出る汗を拭きながらその場に倒れ込んでいるルナとソールを抱えるとゆっくりとベットヘ寝かせ、自分はそこに用意されていた新しい服とマントを羽織り今まさに部屋を出ようとしていた。


「待ってなの、私も連れて行ってなの」

「ルナよ寝ておけ、明日もワシが帰って来た時にこの封印を解いてもらわねばならんのだからな」

 そう、この部屋で行われていたのは城を抜け出すために魔王の力を封印する儀式であった、解除にはこの場所と封印をしたルナとソールが必要になる、どれか一つでも欠けるとワシはこの弱い姿のまま(それでも一般人の数百倍強いが)一生(ちなみに魔王は年老いていくが寿命の概念はない)を過ごさねばならんのだ。

 つまりだ、お前たち二人にはここで眠ってもらい、ワシが帰ってくるとすぐに封印を解いてもらった方が良いのだ。


「でもですの、今日は最終決戦ですの、私の野生の勘が付いて行かないと大変な事になるって言ってるですの」

 『月の乙女』ルナの予言か・・こいつは月の満ち欠けと星の位置とかでよく当たる占いをしておったの、それが付いて行くと言っておるのか・・よかろうその言葉信じよう。勇者と違い己の身を守るすべは持っておるな。

「もちろんですの、私は死にませんの」

「ではルナ行くとするか」

「ハイですの」

 ソールはこのまま寝かせて・・・しっかり起きてるではないか。

「私も行くにゃ、抜け駆けは許さないにゃ」

「ではソールも行くか」

「もちろんにゃ」

 ソールは置いて行きたかったが騒がれるのも面倒だ、ルナがいれば何とかなるだろう、仕方ない連れて行こう。


 と言うわけで『魔帝』とのバトルにはワシら三人で出かける事になったのだ。

 おっとその前にやっておかねばならぬ重要な事がある。

「おーいトトネテ、トトネテはおるか」

「はいこちらに」

 そう言いながら現れたのは真白い仮面を被り全身真白な包帯のような布で覆われた人だ(男女どちらかはこの姿だし、中性的な声質等のためワシにも不明なのだ)いや本当に人なのかも不明だ。

「『千顔の禺者』トトネテよ今日もワシの影武者を頼むぞ」

「かしこまりました」

 そう言うと魔王の体に障り、その手を仮面に当てると一瞬だけ痙攣を起こしたかと思うと全身を覆っていた包帯がスルスルっとほどけ、ゆっくりとその仮面を外すとそこに現れたのは魔王と瓜二つの姿の男が立っていた。

「ではワシが帰ってくるまで玉座を守ってくれ」

「かしこまりました魔王様」

 そう言うとトトネテは玉座にどっしりと腰を下ろし、どこから見ても魔王の風格を漂わせている。

 そうトトネテは触った者になれる力を持っているのである、その能力はその者の力、魔力も同じように使え、しかも記憶までも真似る事が出来るおまけまで付いているのだ。

 だから勘の鋭い奴でもワシと入れ替わった事に気が付く奴はおらんだろう、それにこんな夜更けに玉座に用がある奴の方がおかしいだろ。


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