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魔王 恥をかかされる

 ・・・それから一年後・・・


「喜べ勇者よ、約束の学舎が完成したぞ」

「ウソでしょ、あの『闇の森』攻略が完了していたのね」

「議論を交わしたあの夜から数日で『魔帝』とのバトルは終了しておったのじゃ」

 あの抜け出した夜、『魔帝』との壮絶なバトルを制し、その配下であった魔物までもワシの物にしてしまっていたのだ。

 今現在『初心者の森』などで安心してバトルが出来るのも、街道や町などに魔物が出なくなったのもすべて魔王の働きによるものだがそれを知る者は魔王関係者以外にいない。

 本当は魔王は悪人でなければならないと言うお約束のため、誰もその事実を知らない事になっているが正解であろう(実は国民のほぼ全部が知っていたりもする)。


 ただ一つ不思議な事が・・その日の夜に城を抜け出す人影は確認されているが、その後入って来た魔王らしき人影は確認されていなと言う事だ(いくら気配を消し、力を封印してるからといって出入りを確認できないほど魔王の城は無防備ではない)。


「本当にこの学舎を貰っていいのよね」

「もちろんだ、好きにするがいい」

「じゃあ名前も勝手にしていいのよね」

「もちろんだ」

「だったら『魔王立勇者養成学園』でいいわ」

「何だその硬い名前は、もっと砕けた物でもいいではないか、たとえば『セント~学園』とかそっちの方が神々しくていいのではないか」

「いいじゃない、こっちの方がかっこいいし魔王の偉業も称えられるじゃない」

「ワシを倒すための学園にワシの名前が入るか・・・面白い、いいだろうそれで決定だ」

 こうして学園すべての用意が整い、いよいよワシを倒すため前途有望な勇者の卵を育てるための本格的訓練が始まるのだった。



 ・・・そして開校当日・・・


「じゃあ魔王、開校の挨拶をお願いね」

「良かろう、この小童どもにワシの偉大さを聞かせてやろう」

 そう言うと壇上に上がりこの学園の第一期生、それと元勇者を始めとする教師陣を相手に話を始めた・・。

「・・・・・」

「どうしたの、魔王」

 魔王は壇上で黙り込んだままになってしまった。


「ちょっとマオひょっとしてセリフを忘れたの」

「忘れてはおらん、知らんだけだ」

「同じことでしょ、セリフを知らないんだったら」

「違う、ワシの記憶にないだけだ」

「はいはい分かりました、じゃあ今日はここまでね、あっそうだ今日の勝負はマオがセリフを忘れたんだから私の勝ちね」

 仕方ないではないか、この学舎の落成式の時にはワシはここには来ておらんのだ、『魔帝』との戦いまでは実際に経験そておるし、あのシーンまではワシの体が覚えておる、しかしその後は全く記憶にない、それなのにこの恥ずかしいセリフは何だ、ワシが覚えられるわけないだろう。

 台本に文句を言ってもしょうがないが、この内容は何とかならんか、変更は・・ダメだろうな。

 サッシーの方をそんな顔で見るが「ダメです」と言った表情で返してくる・・仕方ないのう、よかろう本番までにはワシの物にしてやろう、そして城に帰ったらこれを本番で言った者に文句を言ってやる。


「ボーっとするのはいつもの事だけど本番ではしないでよね、じゃあ私は帰るから、今日も夕食お願いね」

 そう言ってサッシーは自分の持ち物を片付けると薄情にもサッサと帰ってしまった。


「マオサマ面白かったよ」

 奥で見ていたクルリはサッシーが帰ると同時に走り寄って来た。さて問題です、面白かったのはワシの演技かそれともソールが話してしまったワシの過去の話かさてどっちだ。

 その肝心のソールだがすでに日が暮れてしまっているので猫の姿になってしまっている、今そこに立っているのはルナの方だ。

「ルナよソールは何処まで喋ってしまったのだ」

「お城を出てから学園入学までの全部話してたの」

「そこまで言ってしまったのか」

「でもすごいねあんな事までしていたんだね」

 クルリは尊敬のまなざしでワシを見ておる。

「あんなことだと、ワシは大したことはしとらんと思たがのう」

 ちょっと待て、まさかと思うがソールの奴もワシの物語に大幅に着色してある事無い事言ってくれたんではないだろうな・・。

 クルリの反応からしてもその可能性が大だろう。

「ルナよやはりソールは物語を作り上げていたのであろう」

「半分くらいフィクションになっていたの」

 やはりな、ソールの奴は何でも自分の思い通りに作り上げるのが好きであるからな。


 よかろう、クルリよワシが自ら本当の話を聞かせてやろう。

「本当に、やったー聞かせてよ」

 クルリはいつもながら無邪気に、その大きな瞳でワシの方をじっと見ている。

「ちぃーと長くなるが良いな」

「うんいいよ、マオサマお願いします」

「私もご一緒さてていただきますの」

 奥から椅子を持ち出しルナの方も聞く気満々のようだ、しかしルナはワシと一緒に行動していたのだから内容は知っておろうに。


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