魔王 幼女に困る
「今隠した物を出しなさい」
その手紙を処分しようとした事に逸早く気が付いたのは勇者やヨーコ先生ではなくサッシーだった、おそらくワシの後ろから手紙を見ていたのであろう、しぶしぶ出したワシの封筒を素早く取り上げ、ヨーコ先生の方へ持って行ってしまった。もう観念するしかなさそうだ。
「青い封蝋の手紙の持ち主はあなただったのね、ここに呼んで正解だったのね」
「D組の者が魔王と繋がっているだと、お前何者だ」
教師二人してワシに詰め寄ってくる、分かったからむさ苦しい顔をそんなに近づけるな。
「クルリよ、このオジサン(元勇者)の言う事を聞くがいい」
こうでも言えばクルリは言う事を聞いてくれるだろう。
「はーいわかりました」
そう言うとシーツを服のように巻きつけて(さすがに全裸はまずいだろう)やっとベットから降り、保健室のちょっと大きめの机の所へ移動し、ちょっと大きめの椅子に足をブラブラさせながら、嫌々ではあろうが勇者の言う事をしっかりと聞いている。
ヤレヤレこれでワシも自分の教室に帰れるな、黙って保健室を出ようとした時後ろからワシを呼び止める声がする。
「マオサマどこ行くの」
もちろん声の主はクルリだ。
「ワシの教室に行くに決まっておろう」
「じゃあワタシも行く~」
「こらこら待ちなさい、あなたは初等科に入学ですよ」
まだ説明が途中だったのかヨーコ先生は慌てている。
「え~いやだーマオサマと一緒がいい、一緒じゃないと泣いちゃうよ」
「そう言われましても、困るのですが・・・そうだ、マオ君何とかしなさい」
ちょっと待て、何でワシが何とかせんにゃならんのだ、こんな時こそ校長である勇者の仕事ではないのか。
「え~、この手紙に困った時には青い封蝋の手紙を持つ者に頼めと書いてありますので」
うっ、そんな事は確かに書かれていたな、だから早くあの封筒を始末したかったんだ、サッシーの奴め余計な事をしやがって。
「ではこの娘を高等部へ編入でいいではないか、ただし授業について行けないようであれば有無を言わさず初等部に編入させると言う条件を付ければよいではないか」
「そんな無茶でしょ、こんな子をいきなり高等部なんて・・あっそう言う事ね」
サッシーはさすがに頭が切れる、一度高等部に入れてついて行けない事を自覚させ即初等部へ行かせるのが目的であることに気が付いてくれたようだ。
(ただそんな考えは甘く、見た目は幼女ではあるが本来は100歳を超えたドラゴンだったと言う事を思い出すのは授業が始まってすぐなのだがそれは別の話で・・・)。
「うんいいよ、じゃあお願いしまーす」
クルリはヒョコヒョコとワシの後について教室に向かおうとしている。
しかしそれを止める者が・・もちろんサッシーだ。
「ちょっと待ちなさい、そんな恰好で教室に連れて行く気、それに授業が終わったらどこに帰るつもりよ」
「マオサマの所だよ」
「いけません、女の子を男の一人暮らしの所に住まませるなんて出来ません」
慌てているのはヨーコ先生だ、ワシは構わんが、と言うかワシの手紙にはそうするようにとすでに決められておるではないか。
「そうよ、こんな男の所にか弱い少女を預けるなんて私も反対します」
こんな男とはひどいぞサッシー、何度も言うがワシは幼女を襲う趣味はない。
「クルリちゃん私の所に来ない、部屋は空いてるわよ、それに私が初等部で使った服で良かったら使っていいわよ」
「いやー、マオサマとじゃないといやだー」
クルリはそう言うとワシの後ろに隠れてしまった、よく言うではないか泣く子と何とかには勝てぬと、と言うわけだサッシーよそれくらいは許してやれ。
話も済んだし、授業に行こうと思ったが(どうだワシも真面目だろう)こんな事をしているうちにすでに昼前ではないか、今日はサボりだ・・よし決まりだ部屋に帰ろう。
「ちょっと待ちなさい、私も付いて行くわ」
いいのか優等生のサッシーもサボりで、ワシは知らんぞ。
「いいわ、一日分くらい自習で挽回します、それよりもあなた達を二人っきりにする方が心配よ」
「君たち、授業に・・・」
校長(勇者)がそんな事を言っているような気がするが、それは聞かなかったことにしておくぞ。




