魔王 命の危機を感じる
「うぅん~ここどこ?」
この子はゆっくりと目を開きベットの上でぼーっとして辺りをキョロキョロと見ている、辺りを見回すその瞳もグレーだ。
「先生、目を覚ましました」
サッシーは慌ててヨーコ先生を呼びに行った。それと同時にその子はワシを見付けたらしく掛けられていた布団を跳ね除け全裸でワシに飛び付いてきた。
「マオサマ会いに来たよ」
なんと、この姿のワシを一目で魔王と見抜くとは一体こいつは何者だ、そうかやっと城の奴がワシの正体に気がつてくれたか、それならこんな所にはもう用はない堂々と正面から城に戻ることが出来るな。
「お前は一体何者だ」
「ワタシだよ、クルリだよ」
「クルリだと、まさか昨日のドラゴンか」
「そうだよ」
「お前は自分の親の所に帰ったんじゃないのか、いくら成獣のドラゴンでもあの地までは片道一週間以上はかかるはずだぞ」
「え、そんなにかからないよだってパパはマオサマのお城に住んでるんだよ」
「なんだと、ワシの城に住んでるだと。お前の親は一体誰だ」
もしそれが本当ならここからだとドラゴンなら一時間で到着も可能だろう。
しかしこんな子供はワシの配下にはいなかったはずだが・・・。
「パパはねアスタルテだよ、ママはねピルカだよ」
「アスタルテとピルカだと、ならば『雷音の黒竜』と『氷壁の白竜』の子だと」
「うんそうだよ、やっぱり本当だったんだね、お兄ちゃんがマオサマだって」
「どう言う事だ、最初からワシが魔王と知っていたんではないのか」
「パパがね『吾輩の二つ名を知っていたら本物だ』って言ってたんだよ、だからマオサマが今パパの名前言ったよねだからマオサマだよ」
もちろん言ったぞ、その二つ名を与えたのは何を隠そうこのワシだ、ワシは自分を楽しませてくれ、配下になった奴には名前を与えるようにしておる、それに一度与えた名を忘れるほどワシはまだボケてはおらんぞ。
「だからね、ワタシもこれから末永くお願いします」
「もちろんじゃ、お主もワシの配下となったのだからな」
その言葉がうれしいのか急にクルリはワシの首にぶら下がる様に飛び付いてきたもんだから少しよろめきベットに倒れ込むような態勢になってしまった。
この態勢はまずい、主人公がこんな態勢になった時にはヒロインが帰って来たりするんだ。
「マオ何しているのよ」
予想通りとはこんなもんだろう、おそらくこれからどんな言い訳をしても聞いてもらえないのもパターンだな。
「襲おうとしたに決まっておろうが」
信じてもらえないならこれくらいのジョークを飛ばしておいた方が良いであろう、もちろんその後に間違いなく飛んでくるであろうサッシーからの攻撃に対して防御態勢を取りながらではあるがな。
しかし、その攻撃はサッシーからではなくヨーコ先生から飛んできた。しかもその攻撃はワシにトラウマオ与えかねない物であった(内容はここでは恐ろしく口が裂けても言う事は出来ません・・・)。
「すいません、すいません、すべて冗談です、本当の事はクルリに聞いて下さい」
これほどの恐怖は何年ぶりだ、こいつが噂のスーパー保健医だとしてもワシの配下には絶対に入れたくないぞ。
「この子の名前はクルリと言うんですね」
「そうだよ、ワタシはクルリだよ」
「クルリちゃんその頭の傷はどうしたのかな」
ワシに対した態度とは180度違い、ヨーコ先生は優しくクルリに話しかけている。
さすがだ子供の扱いには慣れているな。
「これはね、マオサマにやられたんだよ、それにワタシの身も心も体も全部マオサマの物だよ」
確かに配下にはしたがここでその説明は非常にまずいだろ、背中に冷たい視線を二人分感じる、ワシの力は封印されたままだ、このままではワシの命が・・・。
「ちょっと待て、その攻撃はワシの話を聞いてからにしてくれ」
無駄な抵抗かも知れないがせめて本当の事を言うからそれまで待ってくれ。




