魔王 登校する
・・・翌朝・・・
フワフワの面倒をソールに任せてワシは学園へと行くことにしたのだが、偶然かそれとも待っていたのか寮の入り口でサッシーがいるではないか。
「マオ偶然ね、もうこんな時間じゃない急ぐわよ」
確かに女子寮は向かいにはあるんだが本当に偶然か、それともワシが昨日のフワフワを頭に乗せて出てくるのを見ようと思ったんじゃないだろうな。
確かに一瞬ワシの頭の方を見た様な気がするがそれ以上は何の素振りも見せんな、そっちの方が気持ち悪いぞ、『あれはどうしたの』とか聞いてくれんんか。
「おい、こむ・・サッシーよ」
「何よ、今小娘って言おうとしたでしょう」
「そんな事はないぞ、ワシは約束は守るからな」
「じゃあ今『こむ・・』って言いかけなかった」
「そんな事言ったか」
「言ったわよ」
ワシが久しぶりにピンチを迎えようとした時にちょうど学園の校門を抜けたが、そこに何かを取り囲むように人だかりが出来ていた。ナイスこれはうやむやに出来るぞ。
「一体こんな所でどうしたんだ」
人ごみに向かい問いかけてみるが返事はない。ワシの事は完全に無視されているようだ。
「ちょっと何が有ったのよ」
「人が倒れてたって噂だぞ、誰かまでは見えなかったけど・・」
ワシの時は無視されてサッシーでは返事をしてくれるのか、よーく分かったこんな時に野郎に答えてくれる奴はいないと言う事だな。
「ちょっと、それで大丈夫だったの」
「ああ、さっき先生が来て保健室へ連れて行ったんだって」
「それならもう安心ね、うちの保健室はそこらの病院よりも設備がしっかりしてるしね」
そうだったのか、魔術実践とか戦闘実践の授業で死にかけて奴が翌日には平気な顔をして来ていたのはそんな事があったからなのか。
一度その設備とやらを確認したい物だな、ぜひともワシの城にも同じようなのを入れさせよう。
一騒動終わった所で(ワシはただの野次馬を見ただけだが)集まっていた奴らは各々の教室にと散って行った。
もちろんワシ等も自分の教室へと向かって行った(ワシは一番遠い別塔に有るD組へサッシーは入り口に一番近いA組へとだが・・・)。
そしてやっとのことで自分の教室に入った所で突然の校内放送が掛かった。
「1年D組 マオ=ウ=サマダ、1年A組 サッシー=ミドリヤ 以上2名 大至急保健室に来る様に 以上」
ワシはまだ何もしとらんぞ、それとも入学の後に有った身体精密検査で何かすごい問題でも、その可能性があるな、ワシは見た目は10代だが、実際には500年以上生きとるしな、そろそろ命が危ないとか言わんだろうな。
「呼ばれたので来たぞ」
保健室のドアを乱暴に開け中に入ると白衣を着た長い黒髪にそのスレンダーさからは想像できない大きな胸の女性が神妙な表情で座っている、これが噂のスーパー保健の先生なのか。
「ワシに何か問題でもあったのか、ワシは驚かんから正直に話してくれ」
「大変な問題が起こりました・・・」
やっぱりそうなのか、昔ほど食欲もないし(※注意 今でも一般男性の三倍の量は食べています)すぐに寝付けないし(※注意 一日9時間は眠っています)女性にはモテないし(※注意 昔からです)・・・・誰だこの失礼なナレーションは特に最後の(※注意・・・)は余計だろう。
「すいませーん、誰と話してるんでしょうか」
「すまん、誰かは知らんがワシの頭の中に響く声が」
「それはいけませんね、すぐに解剖しましょうか」
「遠慮させてもらうぞ」
残念そうに鞄の中から出していたメスを戻している、まさかと思うが解剖の下りは本気だったのではないだろうな。
「ところでお前は何者だ、ここには死にかけた奴も生き返るスーパー保健の先生がいると聞いたんだがお前の事か」
「さー何の事でしょう 私はただの保健の先生の ヨーコ=ハルバル 皆はヨーコ先生て呼んでるわよ」
見た目からも、周りに発しているオーラからもそんなすごい先生には見えない、そうか他に髪が長く顔の半分色の違う先生とか、某男ばっかりの学園でどんな死んだ奴でも復活させていた先生とか、またはもっと未来からやってきた先生とかがいるんだろう、そうだきっとそうに違いない。
「遅くなりなしたサッシー=ミドリヤ入ります」
一人医療について考えていると扉をノックし、サッシーが入って来た、そうだここに呼ばれたのはワシだけではなくこいつもであった。
「二人とも揃ったようね、実はですね確認してもらいたい子がいるんですよ」
そう言うとおもむろに奥のベットの周りを覆っていたカーテンを引くとそこには一人の灰色の髪の女の子が、いや見た目から行くと幼女が眠っているではないか、そしてその額には包帯が巻かれている。
「この子がどうしたんです」
もっとな意見だがサッシーはヨーコ先生に訪ねている。
「あなた達は知らないかしら?今朝校門で人が倒れていた事を」
「それ知ってます、でも倒れてた人は私が来た時にはもう保健室に連れていかれたって聞きましたけど」
「そう、その子がそこで倒れていた子なのよ」
「こんな子がですか」
「そう、頭を怪我して、しかも全裸で」
「全裸ですか、そんな酷い、一体誰がそんな事をこんな子に」
その後二人がワシを見る目がなぜか冷たい、もちろんワシはそんな事は絶対せんぞ、第一ワシは子供に手を出すほど落ちぶれとらんわ。
「それで先生、私達を呼んだ理由は何ですか」
「それがね、この子があなた達の名前らしきことを言っているのよ」
それを聞いてサッシーはベットで眠っているその子の傍まで駆け寄って行った。仕方ないワシも行ってやるか、こんな子はワシは知らんぞ、おそらく別の奴の名前が偶然ワシの名前と似ていたのであろう。
「うぅん~マオサマ~会いに来たよ~うぅん~」
寝言ではあるが確かにワシの名前らしき事を言っておるのお、マオ様と・・・ほーこいつはワシが魔王と言う事を知っているのか、おかしいのう、今の姿でそれに気が付く奴はルナとソールの二人だけのはずだが、あいつらが喋ってしまうなどそんなヘマをするようには思えんのだがな。
「サッシー、マオサマオいじめないで」
今度はサッシーの名前も出て来たの、ワシが知らんと言う事はこの子はサッシーの関係者だな、そうに違いない、でなければワシら二人の名前が同時に出るなど考えられんわ。よし、そう言う事にしておこう。




