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魔王 家路につく

 一つ重要なことを忘れておったがゲートを抜けた所で脱ぎ捨てられた鎧の上に一匹の白猫が眠り、そしてその周りには数名の男共が何か恐ろしい物を見たかのような表情のまま伸びている。

 これはソールの仕業だな、ワシの言いつけを守ってこの鎧の番をしていたのだろう、そしてこの男たちはこの鎧を盗もうとしたか、それとも落し物を届けようとした奴らなのであろう、前者の者ならば仕方ないが後者の者達であれば悪い事をしたのう。


 そうそうワシがその鎧を取ろうとした時ソールの奴が寝ぼけて襲いかかろうとした事を一言付け加えておこう。

「そう言えばあの子はどうしたの」とサッシーが聞いてくるが、さすがに「この猫があいつだ」と言っても信じてはくれないだろう、ここは「きっと飽きて帰ったんだろう」と言うのが正解であろう。


 サッシーはその鎧を身に付けながら「じゃあ明日学園で会いましょうねマオ」などと言っておるがワシはこいつとはもう出会いたくないぞ。

 どういうわけか調子が悪い、いつものように暴れてはいけないような気がする、こいつの中にある何かの力か、それともワシの方に何か問題でもあると言うのか。まあそんな事はないであろう、きっと気のせいだ。


 今日は疲れた早く帰って寝よう。だらだらとゲートを潜ろうとした所でワシを引き留める声がする。

「お客様、モンスターの持ち出しはご遠慮願えますでしょうか・・」

「何の事だ、ワシがそんな事をすると思っておるのか」

「と言われましても頭の上に・・」

 まさかまだあれがワシの上に乗っておるのか・・・恐る恐る手を頭に当てると確かに何か感触がある、クルリとの戦いの中で雷に当たった時に逃げたと思っていたのにいつの間に戻って来たんだ。


「ワシとしたことが、すまんが取ってはくれぬか、どうやってもこいつが離れないんだが」

「困りましたね、ではこの書類にサインを頂けますか」

「なんだこの書類は」

「モンスター持ち出し許可書です」

 なんじゃそれは、持ち出しは不可ではないのか、それではワシはドラゴンとかが欲しいぞ。

「それはダメですよ、持ち出せるのは人畜無害なモンスターだけですよ、でもちゃんと設備さえ整えられますと猛獣も可能ですが、あなたには・・・無理でしょう」

 なめられとるのう、まあよいこんな学生寮でこれ以上ペットを増やす気などない、だからフワフワよすまんが離れてくれんか。

 しかし全く動く気配はない、それどころか無理やり引き離すがすぐにワシの所に戻って来てしまう、くそ仕方ないこのまま持って帰るか。

 渋々ではあるが書類にサインをし、今日はこのまま連れて帰る事になった。チャンスを見付けてそのうち返品しに来るとしよう。


「マオ君、すっごく可愛いよ」

 サッシーはこの姿に笑いを堪えるのに必死のようだ、ゴツイ男が可愛い物を頭に載せているなど森の中ではそうでもなかったのだが街中ではさすがに恥ずかしいぞ。

「すまんがせめて肩で我慢できんか」

 言っても無駄と思ったがフワフワに呟いてみると、何とスルスルっと肩に下りて来るではないか、ほーこいつは意外と頭がいいんではないか。これならまだましであろう。


「うんいいよマオ君、じゃあ、じゃあ明日学園で」

 顔は真面目に言っているがサッシーの体は小刻みに震えている、絶対笑っているだろう、確認したかったが振り返る事もなくサッシーは公園の中に急ぎ足で消えていってしまった。

 確かにこんな恥ずかしい恰好で学校へは行けんぞ、まあ何とかなるだろう、いざとなったらソールかルナに・・・。

 そんな事を呟くとフワフワはワシの胸元へ滑り込んできた、絶対こいつは人の言葉が分かっているだろう、油断ならんな。


 そんなわけで家に帰ると予想通りフワフワを猫になっている時にルナやソールが襲おうとするが(人の時にも物凄く襲いたそうな表情を浮かべていたが)この勝負フワフワの頭脳作戦によって圧倒的勝利で幕を下ろしたようだ。その証拠に朝起きた時ルナとソールが部屋の隅で震えていた事を踏まえもう二度とフワフワを襲おうなどとは思ってはないだろう。


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