魔王 勇者とも決着する
「いい戦いも出来たし、そろそろ帰るとするかな」
「それで悪いんだけど・・・」
申し訳なさそうにサッシーは何か言いたそうだ。
「どうしたまだ何か面白いイベントでもあるのか」
「これ」
そう言って取り出したのは小さな水晶玉だ。
「これがどうしたんだ、何の霊的な物とかすごい価値とかは全く感じなんだが」
「いや、あの、だから・・・」
何かサッシーが口籠っていると、突然大きなファンファーレのような音が辺りに響き渡り、何事かとワシとクルリが見回しているとどこともなく声が響いた。
『勝者 サッシー=ミドリヤ』
「何の事だ、ドラゴンにはワシが勝ったではないか」
「だからね・・ドラゴンは予定外だったの、というかこんな所にドラゴンがいるわけないのよ」
「そうなのか」
クルリの方を向くと申し訳なさそうな感じで少し横を向いてしまった。
「ごめん、眠たくなった時に広い所を見付けて眠ってただけなんだよ」(※ドラゴン語)
申し訳なさそうに小さな声で(人にはうめき声で聞こえている)クルリは言っている、さすがは自由なドラゴン族だワシは許そう。
「ではもうこんな所には用はないな、では小娘帰るとしようではないか」
「マオ君約束は忘れてないよね」
「約束?何の事だ」
「やっぱり忘れてる、マオが言ったんだよねこの競技に私が勝ったら名前で呼ぶって」
そんな下らんことをやっぱり覚えておったのか、決してワシは忘れておったわけではない、ただ言いたくなかっただけだ。かと言ってワシが約束を反故にするなどそんな最も恥ずかしい事は出来んな。
「仕方ない、ではサッシー帰るぞ」
「そうね、予定より遅くなって日も暮れそうだから早く帰ろうマオ」
だからその名前でワシを呼ぶなと言っておるだろう。
「帰るんだね、じゃあワタシもパパの所に帰るね」(※ドラゴン語)
そう言い残しクルリは翼を広げ大空へと舞い上がって行った。ドラゴンの故郷と言えばここから数千キロも離れた山の中だ、きっともう出会う事もないだろう。
まあワシの城にでも行けばドラゴンの配下が一〇匹存在しておるがな。
そこに入れてもいいが序列が厳しく、新人はいじめ抜かれると聞く、さすがにそんな所に子供のドラゴンを放り込もうなどとは思っとらん。
大空に飛び立ったクルリを見送った後は急いで最初に来た森を抜けるがあれだけ出ていたモンスターの類は一切出てこない。
「つまらんぞ、なんか出てこい」
「バカねマオ、目的を果たすと帰りは出ないのが常識でしょ」
だからワシにはそんな常識知らんと言っておろうが、しぶしぶ構えた拳を下げとぼとぼと森を抜けていくのであった。
「元気出しなさいマオ、また付き合ってあげるから」
サッシーはワシの背中を叩きながらそんな事を言っておる。次こそはワシが勝ってやるからな、どこから来るかわからないがそんなカラ元気を出し、一気に森を抜けるとやっとのことでスタートゲートへと戻ってきたのだった。
「お帰りなさいませ、ではポイントの計算をしますね」
入り口の所で待っていたのは受け付けの所にいたお姉さんだ。そのお姉さんは慣れたもので素早くワシらのカードを取り上げ、ゲートの所に付いていた何かの機会のような所に差し込むとその上の画面に数値が現れ
『サッシー=ミドリヤ 戦闘回数 24回 宝箱 1個 合計ポイント 148ポイント』
『マオ=ウ=サマダ 戦闘回数 1回 宝箱 0個 合計ポイント 1ポイント』
そう表示されている。
「ドラゴンでも1ポイントだと、そんなさみしい事になっておるのか」
「えー申し上げにくいのですがマオ様の戦闘はドラゴンではなくフワフワが1回となっております」
「フワフワだけだと、ドラゴンとの戦闘はどうなっておるのだ」
「初心者の森にドラゴンはいませんので簡単な事故と思って下さい」
事故であの戦闘を済ますのかよ、「おい」そう叫んだ時には受付のお姉さんはすでにこの場を離れ元の受付BOXへと帰っている所だった。
「諦めなさい、マオ」
サッシーはワシの肩に手を当て可哀想にと言った表情でマジマジとワシの顔を見ておる、そんな目で見るでない、もっと悲しくなるではないか。
今さらクレームを言ってもどうせポイントは貰えないんであろう、一暴れしてもよいが今日は疲れた、ワシはもう帰るぞ。




