魔王 ドラゴンとの決着
しばらく無音の後、少しずつワシの周りを覆っていた雷雲が晴れだした所で、その向こうにドラゴンが姿を現してきた。
「いった~い、痛いよー」
完全に雷雲は晴れ、そこにはワシの一撃により額から血を流し、のたうち回るドラゴンの姿があった。
「ワシの勝ちでいいな」
「痛いよー」
ドラゴンは子供の様に泣いている。
「ええいうるさい、ワシの配下になるのであればその痛み取り除いてやろう」
「本当に?もう痛くしない?」
「お前が大人しく従うのであればな」
「うん、わかった、痛くしないならいいよ」
「よし決定だな、ワシは裏切りは許さんからな」
「わかったよ、早く痛いの取ってよ」
ワシの配下にするには簡単な儀式が必要だ、ただ遠くから見ているであろうサッシーにはあまり見せたくはない。決して魔王の姿を見せたくないと言うわけではない、やっている事が傍から見れは変態とか言われかねないだけだ。
「早く痛いの取ってよ~」
仕方ない、ドラゴンがまた騒ぎ出す前にやっておくか、えーとサッシーは森の方に逃げて行ったのだからこの角度からはきっと見えないだろうな。大きなドラゴンの陰に入りワシ自身の指を噛み傷口から少し血をにじませた。
「一つ聞くお前の名は何と言う」
「ワタシは クルリ=グランド だよ」
「ワシと契約をする者 クルリ=グランド その者にワシの血を与え我が物とする」
傷口から一滴血液を絞りだし、それをクルリの口に落とすと一瞬ではあるが体全体は光を放ったようにも見えた。
「続いてお前の一部をワシにもらうぞ」
そう言うとクルリの額から流れている黒い血をなめるように口に含んだ。
「よしこれで契約は成立だ」
「でも痛いよ~」
「はたしてそうかな、もう一度見てみろ」
「あれ、痛くない、どうして」
「ワシと契約したんだ、お前には痛みを感じない呪いを掛けさせてもらった」
「呪い?怖いの?」
「そうだワシとの契約はギブアンドテイク、ワシを裏切らん限りその呪いは全然怖くないぞ、ただ一生続くがな」
「怖くないんだ」
「裏切らない限りはな、裏切った時その呪いは体を突き破るからそのつもりでな」
「うん、分かったよ」
「お取込み中の所悪いんだけど」
急にワシの後ろから話しかける者がおる。
「何だ、サッシーか驚かすな」
「ドラゴンの動きが止まって霧が晴れたから終わったのかなって思ったんだけど」
「だれ、このお姉ちゃん」(※ドラゴン語)
「こいつか、ワシのオモチャだ」(※ドラゴン語)
「ちょっと何を言ってるのよ、それよりも近づいて大丈夫なの」(※人語)
もちろんワシとクルリの会話はサッシーにわかるはずはない、しかしサッシーの言っている事はクルリには伝わっている。
「安心しろ、こいつはもうワシに害はない」(※人語)
「じゃあ私にはどうなのよ」(※人語)
「さあはたしてどうかな」(※人語)
サッシーは心配なのか一歩後ろに後退している。
「分かっておると思うがクルリよワシの許可なく人を襲うなよ」(※ドラゴン語)
「うん、分かったよもうしないよ」(※ドラゴン語)
クルリは素直ないい子だ、ワシの配下にはもったいないくらいだな。