PLAY.6
「ゆくぞっ!」
ユキの声を合図に勇斗は魔物に向かって駆けた。
この魔物の名は《ウルフ》。
全身を黒の毛で覆われている狼みたいな存在。
そしてこの魔物の最も優れている点は素早さだ。人間の足の速さより何倍も速いので攻撃が当てずらい。
しかし勇斗には《ウルフ》の弱点がわかる。なぜならGIARU WORLDをやっていたときに何十体と倒したことがあるからだ。
「ユキさんっ!挟み撃ちにしながら追い込みましょう!それがこいつの弱点です!」
言葉を聞きユキは勇斗と対称の方向に走り出す。
そのとき《ウルフ》は勇斗目掛けて牙を出し、噛みつこうと飛び掛かってくる。
「その動きは読めているっ!!」
紙一重でそれを交わし、すかさず空中で動くことが出来ない《ウルフ》の身体に蹴りを放つ。怯んだまま地面に落下すると見えたが、そこには刀を構えるユキが待ち伏せていた。落ちてくる《ウルフ》を確認し刀で一閃。《ウルフ》は身体を両断され消滅した。
そして一瞬の静寂が訪れる。
「やりましたね、ユキさん!」
勇斗は歓喜の声をユキに向ける。
今回の勝利はユキがいたからこそのものだ。《ウルフ》の攻撃をよけ、そして止めを指す。それが今回の、ゲームをプレイしていたときの作戦だ。
ユキは黒のコートを被ったままこちらに顔を向ける。
「見事な戦いだった。……しかし、どこで《ウルフ》の知識を手にいれたんだ?先程の蹴りもかなりの腕だ」
「い、いやそんなことはないですよ。僕はただ――っ!!」
――ユキさんっ!!
勇斗は声を大にして叫び、右手をユキへ必死に伸ばした。
しかしその右手が届くことはなかった。
そのときにはユキの右肩に先程とは違う別の《ウルフ》が後ろから牙を深く食い込ませていた。
「ぐっ……」
不意をつかれたユキは肩にはしる痛みに顔をしかめる。
勇斗は右手を強く握りしめた。そして、
「ユキさんから離れろぉぉ!」
と叫び右の拳で《ウルフ》の顔面を殴りユキの肩から離す。倒れそうになるユキを抱き、右肩の傷口を確認する。
右肩から大量の血が出ており地面にポチャンと滴り落ちていく。
「ユキさん、いま治療しますから。動かないでください」
「……」
ユキは気を失ってしまっていた。
周りに薬草などがないかと思い、ユキから視線を外すとそこには――。
――《ウルフ》が周りに何十匹といた。
「な、なんでここにウルフがいるんだっ!なんで……」
そして勇斗は大事なことを思い出す。以前紗耶香にゲームのプレイ中に言われたことを。
『ウルフは群れで行動する魔物なのよ。だから一匹や二匹倒したぐらいで油断すると仲間のウルフに囲まれてしまうわ。だから気をつけてね』
この状況を目の当たりにして勇斗は背筋が凍る。
「……どうすればいいんだ。一体どうすれば……」
勇斗は死を覚悟した。
勇斗はユキを守ろうと決意した。