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二人だけの世界  作者: 境界線上の日々
第一章 プロローグ
6/8

PLAY.5

 -GIARU WORLD-。

 世界に女性しかいない世界。そんな世界に僕が行くことなってしまうとは……。


◇◇◇


 ……何故だろう?僕に浮遊感が襲うのは何故だ?そうか!

「――空にいるからだ!」

 青く澄みきった空の上に勇斗はいた。いや正確には落ちていた。

「うわぁぁぁぁ!!」

 人は重力には決して逆らえない。だから次第に落ちていくスピードは増していく。ジェットコースター並みの早さで落下。死を覚悟し目を伏せる。

 すると、運が良かったのか深い湖に頭から突っ込んだ。

 バッシャーン、と激しい水しぶき。その中心に勇斗はプクプクと浮かんでいた。気絶をしながら。


……。


 鼻腔をくすぐる甘い香り。ふさふさとした草の布団。意識がぼやけているなか、重たい瞼をそっと開く。目の前に広がったのは青で澄みわたってる空。先程落ちていく時に見たときと同じ風景だ。綺麗だな、と感嘆に浸る。その時、勇斗はこの景色は違うことに気づいた。学校にいたときに見た景色と似ているようで似てなかった。

 では、一体ここはどこなのか?仰向けの状態から上体をおこす。周囲を確認してみると、草原だった。広い草原の端には森がある。

 どうやら学校ではないみたい。

 そのときだ。


「――動くな」


 凛とした声が近くで発せられた。その声と同時に首もとに何かを押し当てられる。勇斗はそれが何か悟る。

それはすぐにでも首を断てるための刀だろう。体を硬直させ、寝ぼけていた思考を名一杯活動させる。視線を僅かにずらす。そこにいたのは、真っ黒なコートを羽織って勇斗に剣先を押し当てている主がいた。顔全体を黒のフードを深く被っている。

「――貴様に選択権を下そう」

 刀を操る人物は、突然口を開いた。そして選択権を淡々と言う。

「一つ目だ。今、わたしに殺される。二つ目……生きるのを諦めるか。どっちだ!さぁ選べ!」

「どっちも死ぬよっ!!」

「――黙れっ!」

 反論したところ、首筋に当たる刀がさらに奥に食い込んでくる。刀の人物はこちらの様子を窺っている。

「おい貴様!さっさと選べ!死にたいのか」

「いやいやいや。選択肢が全て死なんですけど!……いや、待て。……この選択肢」

 勇斗はなにかを思い出した。

 ……GIARU WORLD でのイベントと同じだ!最初のイベントと同じなら行動するべきことはわかるはずだ。

 左手を刀に添え、勇斗は静かに立ち上がる。

「なっ!?貴様殺されたいのか!」

「ねぇ、君は僕のこと殺す気なんてないはずだよ。むしろ殺すなら、湖に浮かんでいた僕を放置していたよね。――ユキ」

 ユキは驚いたような動作をする。

 名前を知っているのが驚いたみたい。

 すると刀はシュバッと風切り音を静寂な草原に響かせ、鞘に収められた。勇斗はひとまず呼吸を整え、さらに口を開く。

「あなたの名前はユキ・ミネルヴァさん。そして、僕を助けてくれてありがとうございます」

 頭を下げ、ユキ・ミネルヴァさんに感謝する。

 あの時、助けてもらわなかったら勇斗は死んでいた。それを救ったのが彼女。つまり命の恩人なのだ。

「う、うむ。わたしが貴様を助けた。騎士として当然な事だ。……しかし何故、貴様は名を知っている?」

「えーと……そ、そうだ!僕の名前は覇王勇斗です。よろしく、ユキ・ミネルヴァさん」

僕はこのゲームをプレイしたことがあるからさ、なんて言えるはずがない。なので誤魔化すことにした。

ユキさんは一瞬躊躇ったが深くは追求しないみたいだ。

「――ユキでいい。こちらこそよろしく、覇王勇斗」

 挨拶をし、お互い握手を交わす。

 最初のイベントと今の出来事が全て同じだった。このあとのイベントも起きる可能性が十分にありえる。

僕にそのイベントをクリアすることは出来るのだろうか。

「覇王勇斗、大丈夫なのか?先程の水で風邪を引いてしまったか?」

気づかないうちにユキさんが顔を除きこんできていた。どうやら長い間考え込んでしまっていたらしい。

「大丈夫、大丈夫っ!僕これでも風邪を引かない体質なんだ」

そうか、とユキさんは頷く。

――が、そのときだ。

「危ないっ!」

突如ユキさんは声を張り上げ僕を抱き寄せてきた。そして素早く頭を抱え込むようにしゃがみこむ。

刹那、僕たちの頭上すれすれをなにかが横切る。 そして草原にズザザッと勢いよくなにかが着地する。

「……闘えるか?」

ユキさんがそっと耳打ちをする。

「闘えます。僕はまだ死にたくないですから」

そう言い、スッと立ち上がりなにかを視界に捉える。このとき一つ確信をもてた。


(思った通りだ。この世界は間違いなくGIARU WORLDの世界。両方ともこの場所に魔物が現れるのは、間違いない)


この世界はGIARU WORLDの世界だ。



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