PLAY.3
「お兄ちゃーん!お願いだから女装して、ね!」
「いやだ、断る」
「そこをなんとかお願いしますよぉ」
「ダメだ」
登校中こんな会話を永遠と繰り返す。いつも通りの登校なのでなんら気にしない。
数十分歩いてようやく高校に着いた。普通の私立校なので一見変わった学校ではない。むしろ普通過ぎて飽きてくる学校だ。
普通の学校はほっといて、勇斗たちは正門をくぐり昇降口まで歩いていく。勇斗と桜は同い年の兄妹である。つまり同じ学年に兄妹がいること。
昇降口の下駄箱で靴をはきかえ、学校の中に勇斗と桜は入っていく。
同学年に妹がいるということは、勇斗が学校で恋愛などをしたときに妹へすぐ情報がいってしまう。そして家で桜にその事に関して深く追求され、一日中問いただされてしまうのだ。
三階にある教室まで桜と並んで階段を上っていく。
「お兄ちゃん、今日も昼休みにあそこ行くの?……今日ぐらいわたしと遊ぼうよー」
「うん。……ってか、桜とは毎日家で遊んであげてるよ」
「家は家だよー。学校でみんなに見せびらかすんだ。お兄ちゃんとわたしの兄妹愛を……」
「――途中から意味がわからないよ、桜」
あはは、と苦笑する。勇斗と桜は三階に着いた。
「――じゃあね、お兄ちゃん。帰りは一緒に帰ろうね」
別々のクラスなので桜は右の教室にパタパタと走っていった。勇斗は桜を見送り、左の教室へと入っていく。
◇◇◇
『キーン、コーン、カーン、コーン』
昼休みを告げる鐘の音がスピーカーから盛大に鳴る。瞬間、クラスメイトたちは先程までの静寂からは想像がつかないぐらい活気で満ちあふれていた。購買へ弁当を買いに行く者、友達どうし机をくっつける者、他のクラスに出掛ける者、など様々な者が出てきてクラスは騒がしくなっていく。
そんななか勇斗は席をたち、教室を出ていく。
これから大事な人に会いに行くのだ。
手には荷物を持たないで廊下を歩き、屋上を目指す。途中クラスの男子に声をかけられたが適当に返答し屋上に向かう。屋上に続く階段を一段抜かしで上っていき、ドアが見えてくる。
「……早く、あの人に」
ドアノブに手をかけ捻る。鍵はかかっていなかった。きっとあの人が先に屋上に行っているからだろう。そのまま外側にドアを開く。
一瞬にして視界が青空で埋め尽くされる。雲一つない綺麗な青空。そのなかに一つポツンと美しい女性が写っていた。
「――し、篠宮さん!!」
急に名前を呼ばれ、紗耶香はビクンッと肩を揺らす。
「こんにちは、覇王さん」
勇斗は早足で紗耶香のもとへ向かう。
こちらの様子に気づいたのか紗耶香は鞄から一つのゲーム機を取り出す。
それにならい勇斗もポケットからある一つのゲーム機を手に持つ。
「――狩りに行きましょ!!」
「――狩りに行きましょう!!」
二人の声がピッタリと重なった。
そしてゲーム機――SHPの電源を同時にONにする。