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いつもの日常。それはかけがえのない大切な存在だった。そんな日常の大切さを、この時の愚かな僕は知らなかった。
……いや、気づいていなかったんだ。
あの日の出来事が全ての終わりだったということに……。
◇◇◇
遠くまで広がる草原で二人は一匹の敵に剣を振るっていた。
「そっち行ったからお願いします!」
「わかったわ!」
紗耶香が剣の柄を強く握る。そして動く敵目掛けて一閃。グオォォ、と力ない叫びを上げ敵は光の粒子になり、上空へ飛んでいく。
空の彼方へと消えていくのを確認し、勇斗は紗耶香に振り向いた。
「ありがとう、紗耶香さんのおかげでやられないですんだよ」
「礼なんていらないわよ。私たちパーティなんだから」
その言葉が胸に響き渡る。勇斗は紗耶香の隣に移動し、歩く。
――ここから目的地までは、あと1時間だったはずだ。
「紗耶香さん、疲れてない?目的地まで1時間あるけどこの草原で休もうか?」
今の時刻は午後1時。昼食を食べるのには絶好の時間帯だ。限りなく広がる草原での昼食は楽しいことこのうえない。紗耶香さんが有無を言おうとした瞬間、勇斗のお腹が盛大に鳴り響いた。それを聞き紗耶香は微笑んだ。
「ふふっ、いつも勇斗君は面白いね。私もお腹すいたから昼食一緒に食べよ」
二人で草原に腰を下ろし、今日紗耶香が用意していたランチボックスを取り出す。中には定番のサンドイッチが入っていた。挟まっている具はどれも同じ、ツナだ。
勇斗はそれを見るや、一目散にサンドイッチに手を伸ばし、いっきに頬張る。
「おいしいです、このサンドイッチ」
「感想ありがとう。このツナのサンドイッチ、勇斗君が食べるから張り切って料理したんだ」
このサンドイッチは以前食べたことのある懐かしい味だ。
そう、僕と紗耶香さんがこの世界に来ることになったあの日に食べたサンドイッチと同じ味。
あの日を思いだし、僕は現実世界のことを振り返る。
……全てはあの日に始まり、そして終わりを告げた。
読んでくださり、ありがとうございます。
頑張りますので、また読んでいただければ嬉しいです。