窓口ドラマ
私藤乃は、応募作品が完成すると最寄りの郵便局に足を運びます。
歩いて十分という至って行きやすい場所ですので、少しの雨が降る日でも封筒をビニール袋に入れて出掛けます。
封筒に『〇〇文学賞』とでかでかに記した文字が目立つので、もしかすると受付の方に(この人何年も投稿してるけど、まだ諦めへんのかな?)などと思われていないか気になります。
自意識過剰でしょうか?
そもそも訪れる人の顔を、いちいち窓口の方はメモリーするわけないかと思いますが、やはり気になります。
「夢追い人来た、マジ来た」
「何年も投稿してて無理やったら諦めたらええやん」
「見てて痛々しいわ」
なんて、郵便局を後にした直後、云われていたら結構キツイですね。
いや、耳に入らないから平気ですがね。
「これ、速達便でお願いします」
締め切りが数日前だと速達便で依頼します。
ゆとりがある場合は普通です。
窓口の方はだいたい二人おりまして、所作は少し異なりますが、お二方丁寧に対応して下さいます。
私の顔を覚えているかどうか、私は受付の方に視線を向けますが、やはり普通に郵送手続きをされるだけです。
気にしているのは、私だけでしょうか?
枚数が少ない児童文学はわりと安いです。
「二百三十円です。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
言葉と言葉の間に、何かを感じ取ろうとする私がいます。
『夢追い人、帰った』
脳内に幻のボイスが響きました。
あくまで自意識過剰の私は、郵便局を出ると、いつも行くスーパーへと直行するのでした。
(応募作品、入賞しますように‼)