仮面の魔術師様!学園の準備に忙しいようです!
一年前、魔王が復活し人類は絶望の淵に落とされた。
そんな中、たった一人魔王城に辿り着きそして、魔王を封印したものがいた。
その名も"仮面の魔術師"その人物は名前の通り仮面を被っており、年齢、性別、全てが謎に包まれた謎の人物だ。
そして、仮面の魔術師は魔王を封印したと同時に姿を消した。
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「うわー!!なんでまたこんな物を買ってくるんだーー!!!」
平和になったこの時代、不釣り合いな程の悲鳴がある家から聞こえてきた。
「何が?私は仮面の魔術師のファンとして、グッズを集めているだけですよ?仮面の・ま・じゅ・つ・し・さ・ま・!」
そこには、薄紫に少しピンクが入った髪に赤紫の目、白い肌を真っ赤にしてうずくまっている一見女の子にも男の子にも見える中性的な少年に、ピンクパープルの髪をハーフアップにしている、誰もが目を引くような美少女がニヤニヤしながら仮面の魔術師のグッズを見せびらかしていた。
そう、この少年こそが仮面の魔術師、シオン・フェルグレイル(15歳)。そして、ニヤニヤしながら仮面の魔術師キーホルダーを揺らしているのが妹の、リリィ・フェルグレイル(14歳)。
「こっ心にもないことを!うぅ、妹よ、頼むから俺の黒歴史を全力で掘り起こすのはやめてくれ!」
そう、彼、シオンにとって、仮面の魔術師は黒歴史以外の何者でもない。
昔は影の英雄たるものに憧れて、シオンの"かっこいい"を貫いていた。だが、魔王を封印すると同時突然、今までのことが恥ずかしくなってきたのだ。
そして、仮面の魔術師の名をすて、ただの"シオン"に戻った。
シオンとしてはもう過去の事なんて綺麗さっぱり、忘れてしまいたいのだが、周囲がそれを許してくれない。
正体こそ知るのは妹のリリィぐらいだが、魔王を倒した勇者として皆に崇め讃えられ、そこらじゅうから仮面の魔術師の話が聞こえる。
そして、何よりリリィが事あるごとにいじってくるのだ。
そういう訳で未だ仮面の魔術師と言う名の黒歴史を忘れずにいた。
「お兄ちゃん、さっきから準備の手が止まってるよ?早く行かないと間に合わないよ!」
「誰のせいだと・・」
シオンはリリィを半目で睨みつつ制服に袖を通す。
今から二人は、名門校王立魔導学園に通うのだ。
そのために準備をしていたのだが、直前にリリィがからかってきたため、準備が止まっていたようだ。
なぜ、二人が学園に通うのか、それは、半年以上前、シオンが仮面の魔術師をやめてすぐのこと〜
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「お兄ちゃん・・いつまで部屋に引きこもってるつもり?」
リリィはため息をつきながら兄、シオンがくるまっているベットに視線を向ける。
「うぅ、外に出たくない。外に出たら仮面の魔術師の話が聞こえてくる!なんなら部屋にいても聞こえる!もう嫌だ!みんな早く仮面の魔術師なんて忘れてくれ!俺の黒歴史を掘り返さないでくれ!」
当時は魔王を倒した直後と言う事もあり、あちらこちらから仮面の魔術師の話が聞こえてきた。
そして、シオンは恥ずかしくて一日中布団の中にくるまっていた。
そんな兄に呆れつつリリィは一枚の紙を差しだす。
「私、ここ行きたい!」
シオンは少しだけ布団をずらしリリィが持ってきた紙を見る。
そこには王立魔導学園のチラシが飾られていた。
「・・学校?急にどうしたの?」
「ここはただの学園じゃないのよ!魔術を専門的に学べるの!私には魔術の才能があるからね!それに、ここは貴族も通うのよ!私にピッタリじゃない!制服も可愛いし!学費はちょーと高いけど、仮面の魔術師のお兄ちゃんなら払えるよね!」
「うっ!!」
リリィの仮面の魔術師という言葉にダメージを受けつつ学費の値段を見る。
チラシには年、金貨一枚と書いてあった。
「・・・・金貨一枚!?」
一般家庭の一ヶ月の給料が大銀貨5枚よ?その倍の金貨一枚!?
「出せないことはないけど・・本当にいくの?こんだけあればもっといい暮らしが・・・」
「出せるなら問題ないでしょ!私ずっと家に放置されて!友達の一人もいない。なんて可哀想なのかしら!」
「うっ、」
確かに仮面の魔術師を名乗ってはや3年。その間ほぼ、リリィを一人家に残していたのは事実だし、この街にはリリィと同い年の子もいない。
それを言われてしまえばシオンに勝ち目はないのだ。
「わかったよ。はあ。でも、・・そうか学園か。
・・・・俺も行こうかな。」
「え、私のお兄ちゃんめっちゃ過保護なんだけど!」
「違うよ!」
慌てて否定すると、リリィは納得いかないと言った顔で見つめてくる。
「だってお兄ちゃんもうまなぶ事ないでしょ?なんで行くのよ。大体さっきまで外に出たくない〜って言ってたくせに!」
「いや!確かにもう学ぶ事はないかもしれないけど!俺だって友達欲しいんだよ!それにリリィと同じ次期に行けば仮面の魔術師なんてみんな忘れるよ!今からでも俺は人生をやり直すんだ!昔のことなんて綺麗さっぱり忘れてやる!」
「・・・・」
そんなシオンにリリィが哀れみの目を向けていたのはシオンのしるよしもない。